[05]福祉はビジネスになるのか?(上)

*コムスン
今回は福祉はビジネスとしてどういうものなのかを説明したいと思う。
読者の皆さんはコムスンの事件を覚えているだろうか?良ければ以下のリンク
をクリックしてみるといい。
http://www.j-cast.com/2007/06/06008227.html
今年4月にコムスンは介護報酬の水増し請求、ヘルパーなどをいないスタッフを登録して指定を受けていたことなどを理由に認定更新を拒否された。これは事実上の廃業処分でコムスンはもはや他の事業所に介護事業を売却するしか選択肢はなかった。そして今ニチイやジャパンケアサービスが譲渡を受け入れると表明しているが、この連中もかつて保険料の過大請求をしたことがあるごろつきだ。その最低のハイエナ達がコムスンという腐乱死体に群がっておいしい部分を貪ろうとしているのだ。
コムスンの所業に関しては多くのテレビ出演者たちが「福祉を食い物にするな」という批判を口にした。なるほど民間企業なのに福祉を利用して金儲けをしてはいけないというのか。IT産業や金融ではいくらでもビジネスに徹して文句は言われないが、福祉はいけない・・・・偽善もいいところのダブルスタンダードだが、そもそも福祉が「食い物」にできるほどおいしいビジネスなのだろうか?この点の検証が不十分すぎると考えざるを得ない。
*福祉はビジネス不適格
結論から言おう。福祉はビジネスとしては「食い物」にできるほどおいしくない。大雑把に言うと構造的に利益が出ない構造になっている。現在でも有料老人ホーム、ケアハウスなど除いてほとんどの福祉系施設、居宅介護は青息吐息の状態といっても過言ではない。
コムスンの所業はレッドカードに相当するほど悪辣で弁護の余地はない。だが、なぜコムスンが水増し請求などの不正に手を染めたのか?そこにはやはり福祉ビジネスの致命的な欠陥をあるのだ。その欠点をわかりやすく説明しよう。
(1)福祉は金食い虫
まずはこれが大事だが、多くの人は福祉がどれだけお金を浪費するかわかっていない。なぜか福祉はお金があまりかからないとはっきり言って舐めてかかっている。介護保険制定前は措置費で、介護保険が始まってからは保険料である程度かかる費用をカバーしてくれるからどれだけ福祉が金食い虫か実感が薄いのだ。
実費の場合、要介護者が満足できる生活をするためにどれだけお金がかかるか?この場合、施設のような集団管理ではなく個人住宅に住み、24時間の介護が必要だと仮定する。また月の居宅介護支援費の適用はなしで試算する。
身体介護が一時間4000円ぐらいなのでそれが一日なら
4,000×24=96,000円
1ヶ月なら
96,000×30=2,880,000円
1ヶ月なんと288万円!!
これだけで立ちくらみがしそうだが、まだ追加料金がある。
食費は1日2000円かかるとすると1ヶ月で6万円。
光熱費も大雑把に1万円くらいにしよう。
そして案外大きい医療代金
医療保険は適用されない条件で計算する。
参考資料はこちら↓
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_4_1.html
実費だと平成16年で年間平均78万円。
ここで大体の1年での総合を計算してみる。
(288×12)+(6×12)+(1×12)+78=3,618万円
言っておくがこの3,618万は課税されたあとの数字だ。現実社会には「納税」があることを忘れてはいけない。現在の累進課税制度は最大38パーセント。計算をしてみよう。実際には控除などがあり複雑なのだが、この場合所得税のみ38パーセント課税されるものとする
3618÷0.62=5835.4・・・・
5,800万円の収入というとそこらへんのサラリーマンには到底及ばない。プロ野球の1軍レギュラークラス並みの収入だ。しかもまだ終わりではない。要介護状態になって死亡するまで支払いは続く。60歳に要介護状態になったら、女性なら平均寿命は84歳。平均で24年間続くわけだから
5,800×24=13億9,200万円。
人間が福祉に頼る場合、一生でこれだけお金がかかるということだ。
「人間らしい生活がしたい」
「老後を楽しく、尊厳ある暮らしがしたい」
そんな台詞を要介護者本人や福祉関係者は気軽に何の思慮も無く言う。だがこれだけの金額が出せる人はいるだろうか?しかもサービスを受ける本人ではなく、政府や社会に負担させるのはどう見ても過重すぎる負担だろう。第23号で脱施設化などで政府や社会が福祉を切り捨てようとしていると言ったが、無理はないことがわかるだろう。
1年間で3,600万という数字には戸惑いと驚きを隠せないだろう。だが長い間福祉現場にいた俺には意外ではない。福祉関係者をはじめとして、一般の人々も現実的に福祉がいかに金食い虫なのか理解しようとしない。福祉ビジネスの大きな欠陥の一つはあまりにも桁外れの費用がかかりすぎることだ。
次号では他にも福祉ビジネスの致命的な欠陥を説明しよう。
エル・ドマドール