[28]劣悪な福祉サービスの見極め方

前号で俺は利用者にサービスを選ぶ自由はないと断言した。特養、老健などの入所サービスは2,3年待ちが当たり前で、利用者には選択の余地がないのが現状だ。大局的に見れば、入所サービスなんてどこを見ても劣悪でしかも力関係も利用者<施設のところしかない。しかし、そうは言ってもやはりできれば選べるときは「きちんと介護をしてくれるところを選びたい」と思うのが人情だ。そこで今回は「劣悪な福祉サービスの見極め方」を教えよう。これは利用者だけではなく、転職しようとする福祉関係者にも有益な情報だろう。是非今から提供する情報を有効活用していただきたいと思う。
まず最初に断っておくが、少なくとも日本に存在する福祉サービスで顧客が100パーセント満足するものなどない。それどころか、入所サービスの大半の施設は収容所や刑務所に例えられるくらい劣悪な環境のところが殆どだ。その理由もまたの機会に説明しよう。とにかく満足のいくサービスを受けたければもはや数千万から億単位の入居金を要求する有料老人ホームに入居するしかない。しかも、そういった高級有料老人ホームでも「ハズレ」施設があるのだから安心できない。つまり安いお金で受けられるサービスには何かしら欠陥があるものだと思って欲しい。しかし、その中でも明らかにコムスンのように明らかに「最低最悪」の法人が存在する。それらのろくでもない法人を見極める方法を教えよう。
(1)求人広告
最近よく雑誌や新聞記事、テレビなどで有料老人ホームの紹介記事が載る事が多くなった。職員や利用者が明るく笑い、施設は綺麗で光で満ち溢れている写真を見るとすぐにでも資料請求したくなるかもしれない。
しかし、そんなもの絶対に信用してはいけない。当たり前だが自分たちの恥部を進んで見せる施設などどこにもない。利用者が手づかみで顔を汚しながら食事をしたり、介護職員に暴行や罵声を浴びせるところなど報道するわけが無い。
そんなものよりも、日曜日の新聞に入っている求人広告を見たほうがいい。この求人広告の常連になっている施設はそれだけ職員の離職率が高く、職員が定着していないということだ。かなり過酷な職場環境だと思った方がいい。当然サービスの質も低いと見るべきだ。ハローワークならもっと広範囲で求人が出ているのでもっと詳しく把握できるだろう。とにかく他の法人と比べても何度も求人を出すところはかなりのダメ施設だと思えばいい。
(2)2ちゃんねる
最近小規模の施設でもよくホームページを作るようになった。中には専門の業者に作ってもらいかなり立派なホームページを作っているところもあるが勿論その内容は信じてはいけない。理由は先ほどと同じだ。求職者ならどんなくだらない理念で施設を経営しているか知るためにも面接前に目を通した方がいいが、利用する側なら見る必要は無い。それよりも巨大掲示板の2ちゃんねるで介護・福祉版を見たほうがいい。大きな組織なら大抵スレッドが立っている。
従業員が組織に言えない不平・不満を遠慮なくぶちまけているのでとても参考になるだろう。誹謗中傷が多く信憑性に疑問が付くが、それでも平気で提灯記事を載せる新聞や雑誌、ホームページよりも参考になる内情がわかるのでお勧めだ。因みに多くの法人はこの2ちゃんねるにはかなり被害妄想的なぐらい神経質になっている。誹謗中傷の書き込みをしている職員などを特定しようとするぐらいだ。だが「火のないところに煙は立たない」ものだ。それだけ法人側にとって困る恥部が書いてあると思った方がいい。
小さい組織だとスレッドが立っていないことがあるが、「○○県の施設について語ろう」などで地域別にスレッドが立っていることもあるのでそこで探してみよう。なお2ちゃんねる介護・福祉版のアドレスを載せておく。
http://society6.2ch.net/welfare/
(3)見学
最近は介護保険の影響もあり、脱施設化が叫ばれるようになって大分状況は変わったが、それでも昔ながらの施設は閉鎖的で内向的な側面がある。そのような法人にとって外部からの視線ほど煙たいものはない。ましてや深刻な人権侵害や拘束、虐待など社会常識からかけ離れた処遇を課している施設ほど外部の人間を忌み嫌うものだ。
もし知りたい施設があるなら一度は見学に行くことを薦める。施設側は訪問前に電話で連絡してアポイントを取って欲しいなど言うが、そもそもそんな義務は訪問側にない。税金と社会保険で経営する施設は原則公開するべきだ。アポなど取る必要など無い。来訪者に対してどういう態度を取るかは決して侮れない要素だ。
もっともらしく聞こえる個人情報保護を持ち出して見学を渋る(この時点でダメ施設決定だが)なら、「国保連か市町村に苦情を申し立てる」と脅迫すればいい。たちまち態度が変わるだろう。介護保険法では苦情申し立ての権利が保障されているのだ。
(4)勤務表
(3)のように最近は見学に対しても抵抗がなく、オープンにしてくれる施設もある。だが、それだけではいい施設かどうかの判断はまだ難しい。施設によっては露骨に酷い虐待などはしないが、巧みに外部の人間にわからないように糊塗されているところも多い。介護経験者でも一度ちらりと見ただけではその施設の本質的な問題点までは理解するのは難しい。利用者の臀部などの褥瘡(同じ部分を圧迫することにより、皮膚組織が壊死すること)を見せてもらえるなら話は別だがそれはさすがにプライバシーの侵害になってしまう。素人ならもっと見抜くのは困難だろう。それどころか案内してもらって施設のウソ説明のとりこになりかねない。そこで俺はその施設の勤務表を見ることをお勧めする。
「勤務表を見せてください」と言えば、施設側は怪訝な顔をするだろう。いったいなぜ勤務表なのか要求するのか?しかし、勤務表にどんな意味があるのかわからないから、無警戒に見せてくれるだろう。
勤務表には驚くべき秘密が隠されている。介護職の人数を調べれば、大体どのぐらい介護に余裕を持たせているのか?またできるだけ経費を削減しようとしているのか?などその法人の経営姿勢を窺い知ることができるからだ。
法律では介護職:入居者=1:3の割合になるように決められている。つまり、50人の入居者がいる施設では17人のフルタイム職員が在職していなければならない。17人いれば法律上問題は無いが、現実問題この人数では質の高い介護は難しい。つまり17人よりも多ければ多いほど質の高い介護が期待できると言うわけだ。中には退職者が頻発したり、最初から法律を守る気が無いなどの理由により17人にも達していない施設もある。勿論そんな施設は「ダメ施設」決定だ。
エル・ドマドール
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