[47]障害者スポーツ??(上)

今回はオリンピックも近いということなので障害者スポーツを話題にしたい。障害者スポーツで有名なのはオリンピックと並行して行われるパラリンピックだろう。そして、某有名漫画家が描いた車椅子バスケットボールも有名になっている。
障害者がいるのが当たり前だと考えるノーマライゼーションの理念からすれば、このようなスポーツ大会が行われるのはとても喜ばしいことだろう。別にひねくれものの俺も障害者がスポーツに懸命になることに難癖をつけるつもりは無い。しかし、新聞と同じような美辞麗句を垂れ流すのは俺のメールマガジンの趣旨に合わない。今からメディアが取り上げたがらないパラリンピックおよび障害者スポーツの現実をあなた方にお伝えしよう。
1960年のローマ大会から紆余曲折を経ながら実績を重ね、本家のIOCが公認するに至ったパラリンピックも最近ではいろんな歪みが見られるようになってきた。
まずはドーピング問題。「障害者がドーピング?!」と驚く無かれ。障害者のスポーツといえば純粋な感動が売り物だが、内実は健常者のそれと同じように腐敗が進行している。すでに腐りきったオリンピックはメダリストが何人もドーピングが発覚してメダルを剥奪される情けないショーが公認されている。もう世間では日常茶飯事として諦めきっているという感さえある。どうしてアスリートが失格というリスクを背負ってまでそんな危険な薬に頼るかと言えば勝つためだ。勝たなければ莫大なスポンサー契約料や報奨金、名誉までなくなってしまう。スポーツしか取り柄が無い筋肉馬鹿にとって1位以外は何の意味も無い。だからドーピングの誘惑に勝てないのだ。
障害者スポーツの世界も同じだ。報奨金など商業主義が台頭すれば健常者と同じ誘惑に駆られる障害者アスリートが出ても責められない。しかし、ドーピング検査には難点がある。検査には通常の内服薬にも反応するために、大会期間中は障害者アスリートは内服を中止しなくてはならない。障害者アスリートの中にはどうしても薬が必要な選手がいるため、大会期間中は疾患に苦しむリスクが高くなるのだ。
二つ目は障害者の「南北問題」だ。競技の中には障害者スポーツ用にオーダーメイドで作られた車椅子、義手、義足、杖、スポーツ用具などがどうしても必要になる。福祉関係者の人々はご存知だろうが、福祉用具はとても高い。既製品でもかなり高い。それをオーダーメイドで作ると100万円以上するものも出てくる。そんなものが発展途上国の選手が気軽に購入できるだろうか?メダルはもはやお金次第になっているのだ。
その反面、健常者のスポーツでは貧しい国でもチャンスがある。マラソンはアフリカ国家が強いし、2007年のサッカーアジアカップを制したのはろくな練習設備もないイラクだった。しかし、「道具」が大きな要素になる障害者スポーツでは貧乏国家にチャンスは無い。障害者にも健常者と同じような平等のスポーツの機会を与えるためにパラリンピックが創設されたのに、経済格差が浮き彫りになるのは皮肉としか言いようが無い。
また発展途上国にとって一人の個人に100万円以上の競技用車椅子や義手、義足を買う意味は見出せない。そんなお金があるならマラリアのワクチンを買ったり、井戸を掘ったほうがまだ国全体の利益になるからだ。福祉界の理想主義者たちはこのような意見を聞くと眉を顰めるが、貧困に苦しむ発展途上国にとってパラリンピックは贅沢品にしか写らないのだ。
そして3番目。これが一番大きい問題だろう。「障害基準・クラス分けの難しさ」だ。
福祉の世界に関わっている人なら簡単に解るだろうが、障害者は一人一人障害の種類や重さが全く違う。脳性麻痺の障害者でも足を軽く引きずる程度の人もいれば、ベッドに寝たきりの人までいる。そこで障害の度合いや種類でクラスを分けるのだが、これが難しい。誰もが納得できる基準がないに等しく、いつも議論の的になるのだ。俺はクラス分け基準がどうなっているのかといろんな関連サイトにアクセスしたが明確な答えはなかった。
2000年のシドニー大会ではスペインが知的障害者のバスケットボールで知的障害者の中に健常者を混ぜていたことが発覚し、大問題になった。これなども知的障害者の障害基準を明らかにできない事も原因の一つだろう。
因みにスペインチームはバスケットボールで金メダルを得たが、事件発覚後当然剥奪された。チームの中に健常者は12人中10人もいた。これでは組織ぐるみの犯罪と言われても仕方あるまい。IPC(国際パラリンピック委員会)がさらに追跡調査を行ったところ、ロシアとブラジルにも健常者がいたことが発覚。度重なる国際知的障害者スポーツ連盟(INAS?FID)のモラルの無さに激怒したIPCはINAS?FIDをパラリンピックから追放。知的障害者の資格基準が曖昧なままでは参加は認められないとして知的障害者をパラリンピックから締め出すことにしたのだ。現在でも知的障害者はパラリンピックから締め出されたままである。可哀想なのは真面目に努力してきた知的障害者である。知的障害者をサポートする人間がろくでもないためにこんな恥ずべき事態を招いたのだ。
もうお分かりだろうが、障害者スポーツの世界は清く美しいなどとは程遠いものである。今回はパラリンピックにおける問題点に焦点を当てた。次回はもっと本質的なことを語りたい。
エル・ドマドール

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