第21回-よしさんの外出
こんにちは、稲垣尚美です。毎日、暑いですね。でも、せっかくの夏、思いっきり楽しみたいと思ってます。
よしさんが、入所以来初めて、自宅へ外出することになりました。日曜日の10時から19時までで昼食と夕食を自宅で食べてくるということでした。よしさんは、少し耳が遠いのですが、痴呆も少しでかなりコミュニケーションがとれる方です。移動は、車椅子が主ですが、少しなら歩くこともできます。
基本的に外出、外泊は、受け入れ先があればいつでもOKです。
一年ぶり帰ることでよしさんは、その日を心待ちにしていました。「もうじき帰る日ですね」と声をかけると「あんたも一緒にうちへ行こう。普段、世話になっているから、きっとうちの者が、寿司をとってくれるから」とうれしそうに言ってくれました。
外出をした当日は、私は、休みだったのでよしさんが、どのような表情で行ってどのような表情で帰所されたのか、しりません。
次の日に「家は、どうでした?」と聞くとよしさんは、顔をほころばせて「よかったよ。みんなが、集まってくれて。本当によかった。次は、盆に帰るから」普段みないようなうれしそうな表情です。
やっぱり私達は、家族には、かなわないんだなと痛感しました。
自宅が近い人が、多いのに面会が、少ないのは、やはり入所させた後ろめたさがあって来にくいのかとたまに思います。もっと家族に来て欲しいです。
ある日、よしさんの部屋から泣き声がきこえました。見てみるとよしさんが、声をあげてベッドで泣いていました。「どうしたんですか?よしさん。」驚いて声をかけると「うちへ戻ることになったけど、ここの人達と別れるのが、辛くて辛くて。」どうやら夢を見ていたようです。自宅へ戻ることになった夢のようでした。
私達と別れるのが辛いと思ってくれるほどによしさんの心の中に入っていけたんだなと感慨深い思いでした。
2002.08.09