【第3回】有料老人ホーム 歴史編(3)
前回の話を読み返しながら思い出したのは、姨捨山の伝説についてである。長野県の姨捨山という北信に伝わる有名な伝説であるが、ご存知の方も多いだろう。一時小学校の教科書にも載ってましたからね。
姨捨山は飢饉が続く、貧困の山村において子供が家の仕事もできなくなり、ただのごくつぶしとなった老人を口減らしに山奥に捨てに行くという風習についての話である。
ある親孝行息子が、そのしきたりをやぶって、母親を縁の下に隠してかくまう。その山村を支配する殿様の村に対する無理難題を次から次へとその母親が息子に教えて村の窮地を切り抜けていく。年寄りというものは、あらゆる人生の経験をもとにした知恵者で、敬うべき存在として見直され、老人を山に捨てにいくという風習は廃止されていくという筋書きでどっとはからいとなる。
実際は、親不幸者というよりも、老人自らが家族における位置や役割が維持できなくなったとき、山に行くことを選んで周囲を説得したというのが本当の話らしい。つまり、死ぬ時期、死に方、家族との別れ方も老人自身の意思で決められたという点では今の老人よりはるかに幸せなんじゃないかあと思う次第である。
で、前回予告した、中ぐらいサラリーマンの選ぶべき、有料老人ホームとは?の本題に入る。一言述べるなら、入るべき、山(たとえば姨捨山)も存在も実存しない、現代においては、墓場一丁目病院を終の棲家にしたらどう?いうぐらいのアドバイスしかできない。
前回少しお話したが、渋谷老人ダーゼになるためには6000万程度の一時金と月々35万の諸費用、その他に美容室代や歌舞伎座に毎週繰り出すだけのお小遣いや衣装代等が出せなければまず入れない。
いわゆる中堅どころ、普通の郊外のマンション風の3000万程度の一時金と月々15万の諸費用程度の有料老人ホームも難しい。かといって、特別養護老人ホーム、特に新基準で作られた新型(全個室型)特別養護老人ホームは介護保険法の改正でホテルコスト(食費をはじめとして光熱費等も自己負担)を請求される世の中になったから、月々の経費も15万の個人負担は当然超えてくるから、やはりおいそれとは入れない。
従来型特別養護老人ホームの4人相部屋で我慢するなら、ともかく。古い伝統のある特別養護老人ホームは、1963年の老人福祉法制定後にしても築30年近いものもある。確かに床や壁は塗り替え、増改築は繰り返し行われているが、部屋の規格自体が小さいので、6人部屋や時と場合によっては8人部屋も存在するわけで、赤の他人が8人24時間、365日を過ごすにはあまりにもプライバシーがないというのが実態である。
そんな中で、お勧めは軽費老人ホームの1つ、ケアハウスとは何か?墓場一丁目病院とは?いうが次回のテーマである。ちょうど、コーヒータイムに創立35年の特別養護老人ホームを観にいってきた御仁が来た。天皇陛下もこのあいだ御幸?ではない下賜され、訪問なされた由緒正しい施設である。
その実態は、廊下に車椅子を一列に並べ、エプロンかけて、食事介助を受ける風景を眼にしたとのこと。天皇様に「頑張って生きていきましょうね。」と手をにぎってもらい、涙するシーンとは異なり、妙にジーンとくる眺めだったという。今時満足な食堂もない、老人ホームも存在するのが事実である。
2005.08.03
辻本ゆめの