[59]弱き者、汝の名は男なり
転職者シリーズを続けていたが、言い忘れたことがある。転職の際、一番不利になるスティグマ(他者が付ける属性)は何だろうか?福祉の職場経験者も嫌われているが、残念なことに経歴によって差別を禁止する法律はない。しかし、法律があるにも関わらず、差別から守られていないスティグマが存在する。それは男であることだ。
かつて女子学生は男子学生よりも就職で不利だといわれてきた。かつて俺が大学で就職活動をしていた時は、女子学生から「女は男よりも2倍努力しないと内定が取れない」と恨み節を聞かされたものだった。しかし、福祉の職場では逆の事態が起きている。
就職活動での女性差別は聞かなくなったが、福祉の就職では現在でも男は明らかに不利だ。就職氷河期の頃などは採用する介護職は女性のみという施設もあった。現在は人手不足のために性別に拘ってられないようだが、同じ能力の男性と女性がいれば迷わす女性を雇用するだろう。職場での性差別を防ぐためにできた法律が男女雇用均等法だったはずだが、福祉界の女尊男卑には全く役に立っていない。ハローワークの求人などでは採用条件に性別を書いてはいけないが、そんなもの何の役に立たない。とりあえず履歴書だけ送ってもらい、書類選考で落とせば何の問題も無いからだ。
どうして男性は不利なのか?それは男性介護者は女性利用者の入浴介助や排泄介助がやりにくいからだ。自我が強い女性利用者になると男性の介助に強い拒否感を示すことが少なくない。そしてどうしても老人施設では入所者の8割以上が女性で占められている。どうして老人施設では女性が多いのかと言えば女性の方が長生きだからだ。
そういう条件を懸案すると確かにそれは男性を雇いにくい正当な理由になるのかもしれない。しかし、老人施設では女性が多いが、一方で身体障害者施設、知的障害者施設では男性の方が多いのだ。そこでおかしなことに男性利用者が女性介護者の排泄介助や入浴介助を拒否する権利は与えないのだ。女性利用者が同性介助を要求したらそれは認めるが、男性利用者が同性介護を要求しても認められない。ダブルスタンダードもいいところだが、それが福祉界の現実だ。中途半端な同性介助のために男性介護職は不利な扱いを受けているのだ。
100歩譲って排泄や入浴には男性が不利でも仕方ないとしよう。しかし、裸を見るわけではないケアマネージャー、医療ソーシャルワーカーも女性が望まれる。例外は生活相談員ぐらいだろう。なぜケアマネなどでは女性が有利なのか?それを聞いたことがある。するとこんな答えが返ってきた。「女性の方が利用者が相談しやすいからだよ」どんな根拠があってそんな判断をするのか?偏見もいいところだろう。生活相談員には男性が多い現実をどう説明するのか?
医療ソーシャルワーカー・・・病院などで患者の相談業務を行う。医療費の減額をする病院経営者にとって頭の痛い存在である。
生活相談員・・・施設などで利用者の相談や援助などを中心に行う職員のこと。その業務は行政との連携、デイサービスの送迎など多岐にわたる。悪く言えば単なるトラブルシューター。
例え運良く採用されても男性介護者の受難は終わらない。福祉の職場は女尊男卑だと言うことを忘れてはならない。堅気の世界でも男性の場合に比べても女性の方が甘やかされている傾向があるが、福祉の世界ではもっと顕著だ。女性の場合、例えば上司に厳しく譴責されると泣く人は珍しくない。男が涙を流しても同情を買うことはあまり無いが、女性が涙を流すと職場に非常事態宣言が発令されてしまう。しかも男性上司が泣くまで女性を譴責したとなると、譴責されるようなことをした女性部下が悪いのではなく「思いやりのない注意」をした男性上司側が責められることが少なくない。下手すればパワハラで訴えられる恐れもある。
俺に言わせれば公共の場で涙を流すのは社会人失格以外の何物でもない。政治家も芸能人も日本人はやたら泣きたがるが、世界の基準では有り得ない事であることを強調しておく。しかも常に冷静な判断を要求される福祉の職場で感情的になるのはかなり危険な行為だ。それに関わらず泣いた女性が責められることはまずない。「嘘つき男と泣き虫女」(アレン・ピアーズ、バーバラ・ピアーズ共著、主婦の友社)という本では女性はどうしても脳の性質により感情的になりやすいとの事だ。それはそれで解るのだが職場で感情的になることが許されるわけではない。ましてや利用者の安全がかかっている場合もあるのだ。
人間なのだから意見の食い違いや衝突ぐらいどこでもあるだろう。しかし、福祉の職場では男性が女性と議論や口論をするのは止めた方がいい。ましてや相手が女性上司だとかなり危険だ。もし男性が女性上司を論戦でやり込めたらどんな仕返しをされるか解ったものではない。男性同士なら喧喧諤諤の議論をしてもそれはお互い打ち解けるきっかけになるが、女性は違う。よく男は社会的地位や面子に拘るというが、それは全くの出鱈目だ。ある意味、女性の方が面子に拘る。女性上司は自分に恥をかかせた人間を絶対許しはしない。それが例え仕事上だけのことであったとしてもだ。議論に対する考え方は男女でまったく異なることを福祉で働く男性は理解しておかなくてはならない。
男性が気をつけることはいくらでもある。特にセクハラ、パワハラ、生理休暇など元々か弱き女性を守るための手段だったが、中にはモラルのない女性の中にはそれを悪用する人もいる。男性への報復、権力争いに勝つために男性側の何気ない発言(例・「今日は綺麗だね」)などをセクハラと訴える人もいる。男性側はそんなつもりで言ったわけではないと訴えても誰も認めてくれない。極論すれば女性が不愉快だと訴えれば何でもセクハラやパワハラになるのが現実なのだ。男性には恐ろしいがそれが現実だ。福祉界は陰湿な陰謀権術が渦巻く女性社会なのだ。
エル・ドマドール
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