[051]アジアのギフト

 先週のギフトショーの記事で読者の方からどんな国からどんな商品が出展されたのかというご質問をいただきました。このギフトショーというのは春と秋に開催される日本最大規模の国際見本市ですが、一般の方には公開されません。そういうご質問もあっては不思議ではなく、今週はアジアのギフトというテーマで書かせていただこうと思います。
 まず、ギフトとというカテゴリーは商品群としてはとてつもなく広いものです。自動車であろうが、洋服であろうが、消しゴムひとつであろうが、ギフトになりうるわけです。いわゆる企業が使う販促品のようなギフトはプレミアムインセンティブ・ショーという別の見本市があり、ギフトショーでは一般的な贈答品、生活雑貨が主体となります。
 私が受け持った国際機関はアセアン諸国関連です。今年は「日本アセアン交流年」ですので、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムが勢ぞろいしました。これはめったにないことです。今年は日本産業デザイン振興会によるグッド・デザイン賞のアセアンコレクションの選定も春ごろから行われ、アジアン・テイスト、安価というだけでなく、デザイン、品質ともに優れた商品というイメージづくりを始めています。


 私のように出展者を選定する立場から言えば、カンボジアとラオスはほどんど絹製品、インドネシア、タイ、ベトナムは選択肢が多く楽勝、フィリピンは年によりあたりはずれがあり、マレーシアとシンガポールは産業構造が特化しているため軽工業が少なく物価も高いので探しにくい、ブルネイは何もないというのが通り相場となっています。ブルネイは小国で人口も少なく、石油と天然ガスの輸出に依存しているため、まず企業そのものが少ない、日本並みの物価、赤道直下のイスラム教国で文化や嗜好が違う、と言うトリプルパンチをかかえます。今年ブルネイを担当した私はラッキーで、 4社のうち 1社は前述のグッドデザイン賞受賞企業(刺繍製品)で、もう 1社は竹細工で大口商談が入りました。
 この他、雑貨大国香港も大変な数の出展業者でした。また、インドネシア政府も 100人近い売り込みミッションを率いてバザール状態でした。ホールの隅に追いやられた格好になった中国はなぜか人が少ないような気がしました。SARSの余波のせいでしょうか。もともと中国製品はオリジナルデザインのものが少ないため、中国ブースを訪れる人は主として下請け工場を探すケースに限定されるからかも知れません。中国語ではギフトを礼品と書きますが、日本語で贈答品などというより、お礼の品、礼儀というイメージのほうがぴったりのような気がします。
 アジアの出展者どうしも時間があれば互いのブースを訪問し、商談をしている人たちもいました。整然としてディスプレイもおしゃれな欧米系のブースに比べ、アジアのブースは種々雑多、ディスプレイに凝る余裕は微塵もないといった所も多かった感じでしたが、これがアジアのバイタリティ。何だか元気をもらえるようで、ふと遠い昔のシルクロードの市場のざわめきを想わせました。
河口容子