[107]日中韓のキャラクタービジネス

 15年ほど前、キャラクター商品のビジネスに携わったことがあり、それ以来遅咲きのキャラクター大好き人間となっています。先月末に「ライセンシング ASIA」というキャラクターのライセンシング・ビジネスのための見本市が東京ビッグサイトで開催されました。昨年も行きましたが、商品を売買するのが目的ではないので静かな会場です。
 当日、韓国と中国に関するセミナーふたつに出てみました。まず韓国については映画、テレビドラマ、音楽など日本人の感性をとらえる部分が上手なので、キャラクター業界にも韓流ブームが来るのではないかと思ったからです。会場で韓国のキャラクター雑誌をもらいましたが、もはや日本のキャラクターたちと何ら遜色はありません。インターネットの普及が一気に進んだ国だけあってインターネット出身のキャラクターが強いのが日本と違う特徴です。もうひとつの特徴はローティーンまではテレビが中心、それ以降はモバイル、オンラインゲーム、出版という露出媒体別のターゲットがしっかり出来上がっているところです。


 聞いてみれば、国策として国家や業界団体が一丸となって海外市場進出を推進しているそうです。日本は業界団体といえば業界を守るため、あるいは懇親の場としてはよく機能しますが、団体ぐるみで海外進出のような積極的な動きはなかなか出来ていません。従ってコストもかけられず海外進出のための人材も少ない中小企業はジリ貧に陥るという傾向があります。
 中国については、人口、それも子どもからの若者の人口が多い国だけに欧米が早くから進出しています。こちらも政府が子ども向け専門チャンネルやアニメ専用チャンネルの育成を掲げていますが、社会主義のお国柄、海外作品の放映の認可は狭き門のようです。今後ますますクリエイター国家間での熾烈な競争が行なわれることが簡単に予想されます。日本企業が上海市場向けに開発したキャラクターが香港、台湾や日本へ逆輸入されています。これなどは上海がすでにトレンドの発信地となりうる立派な証拠です。
 一方、海賊版、模倣品の世界の工場でもあって、日本企業に取っては進出する前に模倣品が既に流通していることに頭を悩ませます。戦後の日本もそうでしたが、正規品の価値をいかに消費者と作り手に教えていくかが大切です。とはいえ、日本でも未だにブランド商品などは最初から偽物とわかっていても決して安くはない価格で売買されていますので、魅力的な商品であればあるほど海賊版や模倣品が絶滅することはないかも知れません。
 この見本市の翌週、日本のキャラクター企業の展示会に行きました。日本は子どもの数が少ない代わりに、自分も含めて日本は実にキャラクター好きの層の広いこと。冷蔵庫、テレビから台所用品、家具にいたるまでキャラクター・グッズがあります。これは開発途上国には見られない現象です。経済的なゆとりの反映とも取れますし、キャラクターに慣れ親しんで育った人たちが子どもを持ち、孫を持つようになれば当然のことかも知れませんが、ほっと心がなごむもの、あるいは元気にさせてくれるものが必要な社会になってきていることだけは事実のようです。
河口容子