「アウトソーシングからコラボレーションの時代へ」とよく言われます。私自身も貿易あるいは国際ビジネスという切り口での専門サービスを行なう会社を起こしてから 4年半以上経過していますが、アウトソーシングの形式として効果があがる相手は専門商社、貿易に関する政府機関や国際機関に偏ってしまいます。アウトソーシングというのはいわば外注、下請ですから、サービスを買う側と売る側という労使関係が成り立ちます。ということは、買う側に管理能力が必要で、事実、私の仕事の目的や責任を明示し、成果の評価をしていただくことになります。
逆に、貿易や国際ビジネスが未経験という相手にいきなりアウトソーシングを依頼されても私の業務内容を十分にご理解いただけないばかりか、方向性のご判断を仰ぐ事もできず、当然評価もしていただけない、成果もあがらないというのは目に見えているので、最近はすかさずお断りすることにしています。この辺が専門職の仕事の世界の難しさです。
一方、コラボレーション、これは対等の立場でお互いの強みを生かしあう形式の仕事が私の会社でもふえてきました。最近は日本の中小企業の間では特に「コラボ」が流行っていますが、一人前でない者どうしが寄り集まってグループ化したものや自分の利益を得るために誰かを利用するだけではコラボではないと考えます。コラボが成立するのは、お互いに異なった強みがあること、お互いに生かしあうことにより双方メリットがあること、そのバランスが絶妙であることです。
コラボの相手はビジネス・パートナーと呼べるのでしょうが、いったんパートナーに選んだ以上は、目標に向かってお互いを尊重し、高めあう必要があり、コミュニケーションをよくして目標や方針がぶれないようにすることです。ある日本の食品メーカーが中国に進出する際に台湾の企業をビジネス・パートナーとして選びましたが、この日本のメーカーは「ビジネス・パートナーは結婚相手のようなもの、目先の自分の損得だけを追うのではなく、長い目でお互いの利益を考え時には我慢すること」と言っています。以前にも書きましたが、私流に言わせてもらえれば「いざというときに自分の命を預けられる相手」が本物のビジネス・パートナーです。
私の香港のビジネス・パートナーは兄弟ですが、常に同じ仕事を一緒にしているわけではなく、それぞれの仕事の一部が共同プロジェクトとなっています。兄が年長者らしく上手にリーダーシップを発揮しますが、三人とも辛口の論客なので最初の頃は激論バトルをよくしました。また、兄弟間の意見の対立もよくあり、だいたい私が兄に八つ当たりを受け、それを知っている弟が私を気遣うという構図で何とか精神的には収まります。また、相手が兄弟であるだけに私はどちらかに100%味方をすることは絶対しません。ましてやどちらかへの悪口をもう片方に言うなんて事はあり得ません。その反対に兄弟が連合軍となって私を責めるということも絶対しません。嘘をついたり、駆け引きをしない、そしてバランスを保つ努力がいつしか3人の基本となっています。面白いことに、ささいな悩み事は兄弟どうしよりも女性の私に話しやすいらしく、これも信頼の証、私の存在意義と思って大切に受け止めています。
河口容子