[224]労働審判制度(2)
バブル経済が崩壊すると、それまで勢いで経営してきた業績にかげりが見え始めるようになります。そうなると無知な経営者は焦り、しわ寄せとして従業員に対する暴挙が後をたちません。利益激減に対応するための解雇、サービス残業や、休暇を取得させない、賃金や退職金の引き下げや不払い。
こうした経営者の暴挙に対しては、いままで訴訟を起こすしかありませんでしたが、それでは時間と金がかかり、精神的にも負担が多いこともあって、泣き寝入りするしかないのが実情でした。
そこで登場したのが労働審判制度。この制度は労働紛争について、訴訟よりも短い期間で解決を図ることを目的として導入されました。審理には労使問題に詳しい専門家が加わり、ここにも国民の司法参加の一端が現れています。
労働審判手続の対象となるのは、解雇や賃金の不払というような労使間に生じたトラブル(個別労働関係民事紛争)のみです。労働審判官(裁判官)1人と労働関係に専門的な知識経験を有する労働審判員2人の合計3人で労働審判を行います。
労働審判委員会は双方の言い分、争点、必要な証拠調べを行います。審理の過程で話合いによる解決の見込みがあれば調停を試み、調停が成立しなければ労働審判を行うことになります。大体、話し合いで解決することを目的としていますが、話し合いで解決できそうも無いときは労働審判に持ち込みます。
労働審判制度は特別の事情がある場合を除き、3回以内で審理が終結されるため、迅速な結果が期待できますが、それにはしっかりした主張、立証の準備をする必要があります。
この労働審判の一番大きな役割は、審判そのものではなく、こういった審判制度ができたということです。こういった場があること自体が、無知な経営者による暴挙の抑止力となるのです。そういう意味では労働問題に大きく貢献するものと考えることができます。
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