[148]雇用保険の知識(2)雇用保険の給付

(2)雇用保険の給付

雇用保険はその昔「失業保険」といわれていました。その影響で「失業したらもらえる保険」という印象が強いものであったと思います。しかし、現在の雇用保険はその趣旨が雇用を促進するためのものであるため、失業者でなくてももらえる給付もあります。一方、失業中であっても、再就職の意志がない場合は給付がもらえない仕組みとなっています。あくまでも求職者を支援する保険であるということです。

雇用保険でもらえる給付には4つあります。

【1.求職者給付】

求職者給付は新たに職を探している失業者の生活を支援することを目的とした給付です。求職者給付は被保険者の種類(前号参照)によらず、内容は異なりますがすべての被保険者に対して支払われる給付です。給付には以下の種類があります。

・基本手当
 失業した人に支給される

・技能習得手当
 公共職業訓練を受ける人に支給される

・寄宿手当
 公共職業訓練を受けるために扶養家族と離れて寄宿する人に支給される

・傷病手当
 傷病により求職活動ができない人に支給される

一般被保険者の場合は失業前の賃金の5~8割程度を基本手当として受け取ることができます。給付日数は離職理由や被保険者であった期間により90日から360日となっています。パートタイマーなど短時間労働者の場合は給付期間は短くなりますが、基本手当は受給できます。

【2.就職促進給付】

就職活動中の失業者や再就職後の労働者を支援する給付です。

・再就職手当
 求職者が安定した職に就いたときに支給される

・常用就職支度金
 就職が困難である人が職に就いたときに支給される

・移転費
 就職や公共職業訓練のために移転する必要がある場合に支給される

・広域就職活動費
 離れた地域に訪問して就職活動を行なわなければならないときに支給される

(いずれもハローワークが指示紹介した場合に限ります)

【3.教育訓練給付】

労働者の職業能力の向上のために教育訓練を支援するための給付。厚生労働大臣指定機関の講座を受講した場合に給付されます。

【4.雇用継続給付】

雇用の継続が困難な事由が生じたときに、雇用を継続させるために労働者を支援する給付です。

・高年齢雇用継続給付
 60~64歳までの高年齢労働者の賃金減を補うために支給される

・育児休業給付
 満1歳未満の子を養育するため休業する労働者を支援する給付

・介護休業給付
 家族を介護するために休業する労働者を支援する給付

(詳しいお問合せは最寄りのハローワークまで)

[147]雇用保険の知識(1)雇用保険とは?

(1)雇用保険とは?

雇用保険とは厚生労働省が保険者となって行なっている保険事業です。雇用保険の一番の目的は、労働者がなんらかの理由で失業に陥った時に、再就職までの生活を安定させ、就職活動を円滑に行えるよう支援することにあります。ここで重要なことは【再就職】が前提ということです。再就職の意志がない場合は保険給付を受けることはできません。

雇用保険は失業者への給付を行なっているため、失業保険ともいわれています。給付だけでなく失業の予防や雇用状態の是正など労働環境の福祉にかかわる役目を担っているのが雇用保険事業です。雇用保険と労災保険をあわせて労働保険といいます。

【雇用保険は強制保険です】

雇用保険は、個人経営で従業員4人以下の農林水産業を除き、すべての事業所で加入しなければならない【強制保険】です。適用事業で働く労働者はほとんどが被保険者となり、保険料を払わなければなりません。

保険料は会社と労働者が双方で負担します。保険料率は賃金の1000分の15.5でそのうち労働者の負担分が1000分の6。残りが会社負担分となります。

【被保険者の種類】

◆一般被保険者

週30時時間以上働く普通のサラリーマンなど
(うち週20時間以上30時間未満の場合で一年以上継続して労働が見込まれる場合、短時間労働被保険者という)

◆高年齢継続被保険者

65歳未満時に雇用され、現在65歳以上になっている人。

◆短期雇用特例被保険者

季節的に雇用されている短期の出稼ぎ労働者など

◆日雇労働被保険者

日々雇用される人、または30日以内の期間を定めて雇用される人のうち適用区域に居住または雇用される人

保険料は天引きになっているのが普通ですから、給与明細に雇用保険料として天引きされていれば被保険者になっています。天引きされていない場合は被保険者となっていない可能性が高いです。

上記適格事項にあてはまるのに、被保険者になっていない場合は、会社の労務担当者に事情を聞いたほうがよろしいかと思います。強制保険なのに被保険者になっていないことはありえないはずなのですが結構あるのです。世の中不思議です。

(詳しいお問合せは最寄りのハローワークまで)

【訂正】

雇用保険料率が平成14年10月1日より変更になっています。手元の資料が古くてそれ以前の料率を書いてしまいました。

10月1日以前の料率は一般業の場合1000分の15.5でしたが、10月1日以降は労働者と事業者にそれぞれ1000分の1づつ負担増となっています。

雇用保険料率表(2002年10月1日改正)
[業種]         保険料率  事業主負担分 労働者負担分
[一般業]        17.5/1000  10.5/1000  7/1000
[農林水産・清酒製造業] 19.5/1000  11.5/1000  8/1000
[建設]         20.5/1000  12.5/1000  8/1000
(注)各保険料率は、賃金総額に対する率です

[146]会社分割

会社分割とは一つの会社を複数に分割することです。労働者は分割した会社に転籍になる場合もありますし、元の会社に残る場合もあります。いずれの場合も労働条件はそのまま引き継がれるのが原則です。

会社分割による転籍の場合、どの労働者を転籍させるかは、元の会社が決定権を持ちます。しかし闇雲に転籍させてよいかというとそうではなく、そこにはルールが存在します。

分割する営業部門に主として従事している労働者を転籍させる場合は本人の同意は不要です。

しかし、それ以外の労働者に対しては転籍させる場合は本人の同意が必要です。同意が得られない場合は元の会社に残留させなければなりません。

また、分割する営業部門に主として従事している労働者を元の会社に残留させる場合は本人の同意が必要になります。本人が異議を申し立てた場合は転籍させなければなりません。

会社の分割には分割計画書などを作成し、株主総会で承認を得るなど所定の手続きを踏んで進める必要がありますが、この分割計画書には労働契約に関する細かい規定などは記載されないのが普通です。しかし労働条件などの根本的な決まりは別段記載がなくても、そのまま継承することになっています。したがって、賃金や労働時間などの労働条件は転籍先でも変わりません。

(詳しいお問合せは最寄りの労働基準監督署まで)

[145]合併等の労働契約の継承

日商岩井とニチメンが持ち株会による経営統合し、そのリストラ策として社員の年収を20%をカットするというニュースが先週ありました。生き残るためには仕方のないことなのでしょうが、一律年収の平均20%カットというのは不公平ですね。

そもそもこうなったのは上層部の責任。管理職以上の人間が責任を取るべきでしょう。年収1000万円の人が800万円になったって生活は維持できるでしょうが、年収300万円の平社員が240万円になったら死活問題です。しかもベースアップなしボーナスなしでは死ねといっているようなもの。

生き残りをかけて大きな企業同士が合併し、さらに巨大企業となっていく。大きくなれば生き残れると思っているその論理がイマイチ理解できません。これからはむしろ個性の時代。つまり小さいほうが有利だと思うのですが。もっともこれらの大きな企業は大きくなることで利益を生み出してきたわけですから、巨大になること自体に安心感を得るのでしょう。

さて、このような合併により複数の会社が統合されることは何も大企業に限ったことではなく中小の企業でも行われることです。その際に気になるのが労働者の労働条件がどうなるのか、ということです。

結論から言えば「労働契約はほぼ引き継がれる」というのが労働関係法令の考え方となっています。しかし、合併と営業譲渡では微妙にニュアンスが違ったりします。

【合併の場合】

合併とは二つ以上の会社が一つの会社になることです。合併により新しい会社を設立する新設合併と一方の会社が存続し、他方の会社が消滅する吸収合併があります。いずれも新しい会社がすべての権利義務を承継することが原則となります。当然、労働者のそのまま労働契約も継承されます。旧会社の就業規則や労働協約、賃金や労働時間も引き継ぎます。新会社は雇用継承を拒否することはできません。

しかし、合併により会社の勤務形態が変わることもよくあることであり、それにあわせて労働条件も変更になることはよくあることです。その場合でも会社は一方的に労働条件を変更することはできず、法に基づいて所定の手続きを経てから変更しなければなりません。

【営業譲渡】

営業譲渡とは、会社が営業の全部あるいは一部を他の会社に有償で譲渡することを言います。譲渡契約を結び、その項目についての譲渡が行われます。したがって労働条件も譲渡項目になったものがだけが継承されることになります。

しかし、こういう譲渡のあり方だと、以前より労働条件が悪化する懸念があるため、過去の判例では労働条件の譲渡は包括的に行われるべきと判断されています。したがって今のところ、営業譲渡の場合も合併と同じく、労働条件が不利にならず引き継がれると思っていいと考えることができます。

(詳しいお問合せは最寄りの労働基準監督署まで)

[144]未払い賃金の立替払い

会社が急に倒産してしまった。前から危ない予感がしていたが、こんなに急にとは・・。今までの給料はどうなるのであろうか。支払ってもらえるのだろうか?

会社が倒産した場合、再建するのか、それとも清算するのか、で話が違ってきます。再建する場合は、労働者は労働組合を通じて再建計画を綿密にチェックし今までの給料はどうなるのか、リストラは行なわれるのかなど、労働者側に利益を守るよう交渉を行なっていく必要があります。

清算の道を選んだ場合は、未払いの賃金や退職金などの労働債権を確保する必要があります。労働組合を経て弁護士を立て、会社経営者や管財人との連絡を密にとって交渉します。

未払い賃金や退職金などの労働債権は民法や商法で一般債権より優先的に支払われる先取特権として認められています。しかし何もしなくても支払われる、というものでもありませんので、常に交渉を行なっていくことが必要です。

未払いの賃金があった場合、国がその一部を立替えて支払う制度(賃金の支払の確保等に関する法律)があります。これを未払賃金の立替払いといいます。

未払賃金の立替払い

【要件】

1.会社が一年以上事業活動を行なっていたこと
2.倒産し清算処理になっていること
  法的整理:破産、特別清算、民事再生、会社更生など
  任意整理:労働基準監督署長の認定が必要
3.労働者が、倒産の申し立てがあった日(法的整理)、もしくは労働基準監督署長への認定申請(任意整理)をした日の6ヶ月前から2年間の間に退職していること

【限度額】

賃金の支払の確保等に関する法律施行令に基づく限度額
退職の時期 未払賃金の限度額 立替払の上限額

(平成14年1月1日以降)
退職労働者の退職日における年齢 未払賃金の限度額 立替払の上限額
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45歳以上・・・370万円・・・・・・・296万円
・・・・・・・・・・・30歳以上45歳未満・・・220万円・・・・・・・176万円
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30歳未満・・・110万円・・・・・・・88万円
(詳しいお問合せは最寄りの労働基準監督署まで)