[98]使用人兼務役員
役員のなかには従業員が少ないため使用人として仕事をしている人も多くいます。これを使用人兼務役員といいます。
使用人とは使われる人です。つまり従業員、労働者です。使用者は使う人です。つまり経営者です。「使用者兼務役員」ではありませんので混同しないように気をつけてください。
使用人兼兼務役員の定義が問題になるのは、労働基準法の場合「管理監督者かそうでないか」があります。管理監督者に該当するとすれば、労働時間の適用を受けません。つまり、週労働時間40時間の規定や残業代の支払い義務がありません。
しかし、使用人兼務役員であって実質権限も無く、労働者と同じ管理されているような場合は、労働者とみなされ労働基準法が適用になります。労働基準法が適用になるかどうかは「実質的にどうか」で判断されます。
使用人兼務役員の定義は税法でも問題になります。税法では給与・報酬には所得税がかかってきますが、使用人兼務役員の場合は、使用人としての給与と役員としての報酬と分けて考えなければならないからです。(ただし平成18年度の改正によりこの区分はあいまいになっています)
零細企業の場合は従業員全員が役員であることもありますが、その場合全員が使用人兼務役員となるわけではなりません。次の役職に付いている人はたとえ使用人としての業務を毎日していても使用人兼務役員とはなりません。
1.社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役、代表執行役、代表理事、理事長、専務理事、常務理事、清算人、その他これらに準ずる役員。
2.合名会社、合資会社の業務執行役員
3.委員会が設置されている会社の取締役、会計参与、監査役、監事。
4.同族会社の役員のうち一定の株主グループに属している者
このほか、職制上の使用人兼務役員となる場合があります。法人の機構上使用人であると認められる職がこれにあたります
例:取締役支店長、取締役工場長、取締役営業部長、取締役経理課長…など
では「常務取締役経理担当」はどうでしょうか?
経理担当ですから日々経理の仕事からは抜けられず、使用人として職務遂行することとなります。しかしこれは上記1に該当する「常務」ですから使用人兼務役員とはならないのです。
使用人兼務役員の給料は使用人の部分は損金として認められますが、うかつに「常務」等としてしまうと使用人兼務役員として認められず、役員と判断され、損金計上するうえで不具合が生じることがありますので注意しましょう。
【関連記事】
[74]実質的な一人オーナー役員の場合(18年度税制改正)
ディスカッション
コメント一覧
[101]役員給与の損金不算入
役員の給与は原則は損金になります。しかし役員だからといって不相応に高額な場合は損金に算入できません。損金になるかならないかを判断するために基準を設けます。