tax[189]物納できる税金

2013年6月2日

相続すると相続税を払う必要に迫られます。現金などの金融資産が相続財産に含まれるときは、金融資産をもって相続税を支払えばすみます。ところが税金を現金のみで支払わなければならないとしてしまうと、相続した財産が土地や建物だけの場合は、それを売って現金化し、現金で支払わなければならないということになってしまいます。

高度経済成長時代のように土地や建物が右から左へ売れるという時代ならばそれも可能かもしれません。しかし昨今の経済状況では、不動産を右から左へ売却という芸当は不可能です。そういった状況を踏まえ、税務署は相続税に限り現金以外の物納を認めています。

しかし「物」ならば何でもよいのかというと、そういうわけにはいきません。客観的に価値が認められる以下の財産に限られます。物納には順位というものがあり納税の場合はこの順位に従わなければなりません。

1位.国債、地方債
2位.不動産、船舶、特定登録美術品
3位.社債、株式、証券、投資信託又は貸付信託の受益証券
4位.動産

物納にはこれ以前の条件として、課税価格の計算の基礎となった財産であること、日本国内にある財産であること、が定められています。これらを踏まえると実質1と2以外は物納できないのが実情です。

この中で、流動性のあるものについてはむしろ売って現金化し、その現金で払えばよいものも多くあります。問題なのは現金化の難しい不動産でしょう。

相続にあたって、相続財産が不動産で現金化が難しい場合は、とりあえず物納申請をしておくといいでしょう。というのは物納申請をかけた状態で売りに出し、売れた段階で現金納付に切り替えることが可能だからです。この逆はできません。

また、物納が得か売ったほうが得か、もよく吟味する必要があります。売る場合には、測量費、売買手数料、税金がかかります。それをカバーすれば売ったほうが得だといえます。また物納申請をしてその後売却をかけたもののなかなか売れないということもあります。その場合は売れるまでの延納利子がかかります。この金額も長期間に及べば結構な金額になるので、むしろ売却せずすんなり物納したほうが得だったということもありえます。ご自身の状況をよく判断した上で、物納するかどうかを決めましょう。

なお、2006年の税制改正により2007年度から買い手のつきにくい非上場の株式や農地などの物件であっても物納が可能なるなど、かなり物納の幅が広がります。また手続きも簡素化され、物納を認めるかどうかの判断も3ヶ月以内に短縮されます。
2006.01.06