[284]多国籍マナー

先日中国人の女性(黒竜江省ハルビン出身)と接する機会があり、中国ではどんなマナーが在るの?と聞いてみました。日本の場合だと中国料理の円卓は右手で手前に回すのが正しいマナー、などと話したところ、その中国人女性は「ナンセンス!」との返事。個人個人が思うとおりに行動し、楽しくやればいいというのです。日本でまかりとおっている中国のマナーが本国(黒竜江省の場合?)では無いのです。つまり「日本での中国料理のマナー」は「日本で食べる中国料理のマナー」ということです。

大陸で地続きの国では、長い歴史の間にいろいろな民族が交流します。時には熾烈な戦いもあります。戦いには勝ち負けがあり、生活様式や文化もそこで混ざり合い、その中で新しい文化がめまぐるしく生まれてきます。一民族のマナーなど他の民族には通用しません。表面的なマナーなど通用しないのです。

中国に内モンゴル自治区という区域があります。ここは中国ですが、モンゴル人が自分たちでルールを決めて暮らす地域。日本の3倍ほどの広さでその中にはモンゴル族と漢族の人たちが暮らしています。中国なのにモンゴルという特殊な位置づけのため、しばしば民族間でいざこざがおきます。

しかし彼らは民族によって文化が違うということを身を持って体験しており、その民族が一緒に暮らしていくということは、お互いのことを知り、認め、違う事が当たり前であるという大前提に立っているのです。小さい時から自然と刷り込まれているのです。

食事のときも円卓を囲み、楽しければいいじゃないか、という中国人の生き方に、日本のマナーってよく考えるとナンセンスな部分が多いと感じる一瞬でした。確かに円卓をまわす方向なんてどうでもいいことです。

国際交流の波間に生きる現代人として、日本人であることを誇り思い、一方で外国人に接するときはそれぞれの個人事情の他に、国や地域の背景を知ることが大切です。相手の背景を知ることは相手への最低限の基本的なマナーであることを知らなければなりません。

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西沢 泰彦
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