[065]つまようじ事件

私は昔、飲食店を経営していたことがあって、そのときに経験した様々な光景はいまでも語り草になっています。

もっとも印象深いのが幼い子を連れた母子のマナーです。親というのは子供の世話に追われると精神状態がおかしくなることもあるようで、子連れの親の行動はしばしばハナシのタネになります。

飲食店ですから、テーブルには割り箸や醤油ビン、ツマヨウジなどがおいてあります。待つことが苦手な幼児にとって、テーブルの上のこれらは格好の遊び道具。早速幼児はめざとくツマヨウジが入った容器を見つけおもちゃにし始めました。このときすぐに母親が気が付けばいいですが、こういうときは大体下の子の面倒を見ていて上の子にまで目が行き届かないようです。はっと気がついたときには、テーブルに上にはツマヨウジが散乱している。

これを見た母親は動転したかキレタか知らないですが「だめじゃないの!」と一喝してツマヨウジを元の容器に戻し始めます。幼児もこりゃしまった、悪いことをしてしまったと自覚したのか母親と一緒にツマヨウジをしまっている。それを一部始終見ていた私は、その母子が帰ったあとにツマヨウジを全交換したのは言うまでもありません。(今はツマヨウジは一つ一つ包装されていますが当時は裸のツマヨウジです)

同じ様な状況で、今度は心得た母子の場合。テーブルにつくなり、おもちゃになりそうな割り箸、醤油ビン、ツマヨウジなどは子供の手の届かないところへ最初から移動。うむ。こころえておるな。

ところがこれが災いして、寄せたためにちょっとの振動で割り箸入れがテーブルから落下。フロアには割り箸が散乱する。その母親は「すみませーん」といいつつ拾った割り箸を元の割り箸入れに戻している。この場合もその母子が帰ったあとに割り箸を全交換したのは言うまでもありません。

子供を4人連れた母親が入店。で、頼むのは大盛ラーメン一つ。まそれはいい。よくあることです。すぐさまお子様用の取り皿を用意する。しかし、この場合はちょっと驚いた。なんとその母親は自分はちょっと買い物に行ってくるので子供たちを頼むというのです。おまけにラーメンは4つの取り皿に最初からわけてくれという。代金は前金で払っていった。残った子供達のために私は大盛ラーメンを作りましたよ。ええ作りました。

食べ終わった頃母親がやってきて帰った後のテーブルは食い散らかして見るも無残。親のいない子供たちはイスにまでラーメンを食べさせているし、洗った食器、コップは数知れず。それでも売上は¥550。ちなみにこのときウチの店ではお子様用の小さいラーメンもメニューにあったんですけどね。

まー今ではいい思い出です。これらの話はごく一部の人たちの行動であり、これがすべてではありません。また、母親にとって育児とは常識を逸脱することも平気でやってしまう、それくらい過酷な仕事であるということを付け加えたいと思います。

でも、もうちょっとマナーを守ってほしいですね。こちとらどんな客でもお客様ですから何でもしますけど。商売ですから。