第94回 レベルアップ
こんにちは、永礼 盟です。ご購読ありがとうございます。
先日転倒事故が発生しました。自立の方ですが、居室でマットレスに足をすべらせての転倒でした。何事も自分でされようとする方なので、安静にしていてもらう事が難しかったです。
排泄はオムツ対応とし、食事も居室でとってもらう事にしました。しかし、ご本人の訴えは、なぜ自分で出来ないのか?でした。おしっこに行きたいのに、行けない。顔を洗いたいのに、行けない。食事をしたいのに、食堂に行けない。「痛みが落ち着くまでは、安静にしていないとね」そう声かけし、その方の訴えを優しくかわしました。
拘束になるのですが、こう言う時はケアベッドの手すりをする事を徹底します。手すりをしていない事が、再度の転倒に繋がるからです。こう言う所でも、特養派とホーム派の差が出ます。だいたいベッドまで誘導して、手すりをつけ忘れるのはホーム派の様のような気がします。偏見かもしれないけど、集中力がないような。この辺、特養派は違います。利用者を見る目線が全く違う印象を受けます。
転倒の可能性がある人のベッドの手すりをつけないという事に、「はっ?」と思われる方もいらっしゃると思うのですが、事実 これが原因で再度転倒に繋がる事もあります。派閥を作るのは良くないと思いますが、こういう所が出来ていない事から、突き上げを食らうのは仕方のない事かと思われ、結局この転倒事故も、手すりのつけ忘れから一人でポータブルトイレに行ってしまい、再度転倒してしまったと言うお粗末な結果に結びついてしまいました。
今回ドキッとさせられたのは、特養派でもホーム派でもない自分の信念に忠実にケアを行っている職員の話を聞いた事でした。
この転倒事故から数週間が経ち、その方の状態も落ち着いて来ました。そこで、次のレベルアップしなければいけないという意見を言っている職員を目のあたりにしたのでした。
「室橋さんが車椅子になって、誰の目にもレベルダウンしているじゃないですか。もう排泄だってトイレで介助出来るんだし、ご自分で立つ事も出来るようになっています。今後の対応を考えて頂きたいんですけど。」そんな声を聞いた。それは、車椅子での生活になって、表情も暗くADLも落ちているので、気持ちは落ちていない今こそ何か出来る事があるのではないかと言う職員の訴えでした。
カンファレンス後、毎日のリハビリが決まりました。その日、担当フロアになった時に驚く程回復している事を実感し、この仕事をしていて初めてレベルアップを感じる事が出来たのです。
そして、特養派ホーム派に関係なく、ケアに取り組む職員を見てとても新鮮でした。あの目線が、介護を目指した時の新鮮な気持ちだったと思います。いつの間にか擦れてしまったけど、その目線をどんな邪念にも負けずに持ち続ける人がいる事に感動したのでした。
室橋さんは、順調に歩ける様になっています。日光浴をする姿をていると、忙しい毎日似勇気づけられる自分が居るのでした。
2005.03.06
永礼盟