[108]補助金
現在とある精神障害者団体の関係者が補助金の流用のため逮捕される事件があった。しかもこの団体が事業を引き継ぐ前の団体も補助金流用が発覚。精神障害者を助けることを隠れ蓑に国民の税金を横領するなど言語道断もいいところだろうが、もはやこの様な事態は珍しいことではない。不正郵便事件といい、障害者を盾に不正を働く輩が少なくない。補助金を懐に入れながら精神障害者の社会進出を目指すとか言い出すのは普通の人々には理解できないかもしれない。しかし、福祉において障害者や高齢者を支える人々はそのような二重思考が平気で出来る人がなぜか集まってくる。補助金を流用するなど単なる犯罪者だが、そのような連中でも自分たちは社会のために障害者を支えているという認識を持つのだから厄介極まりない。
俺は以前障害者に近づきたがる人々は偽善者に他ならないと断言したことがある。その内容をもう一度引用しよう。
「俺は議論を呼ぶことを承知で言うが、障害者や貧困者などにわざわざ近づいて就労支援や社会参加支援をしたがる人々ほど信用できないものはない。彼らの大半は偽善者だ。(中略)障害者とわざわざディープに関わろうして、善良さをアピールする健常者ほど信用できない人はいない。普通の人々は良いか悪いかは別にして障害者からはある程度の距離を置く。何のメリットもない彼らに近づく人々は何らかの思惑があって近づくのだ。」
この発言をした時は俺はあまりにも過激な発言ではないかと心配になったが、それは無用だった。この発言後、上記の事件が起きた。それどころか俺は障害者に関わる人の中には犯罪者も多いのではないかとさえ思っている。例えば会社のコピー機で仕事と関係ない私事のコピーをしたら、それは厳密に言えば横領になる。それは解雇事由にされても止むを得ない。だが、それなら補助金を横領する人間が逮捕もされず、美辞麗句を叫ぶ姿はあまりにも不道徳すぎるのではないだろうか?
もともと福祉界では補助金の不正流用や詐取は以前から公然の秘密だった。全精社協の事件後、読売新聞は社説で「公金だという意識がないのでは」と手厳しい非難を行ったが、この指摘は注目に値する。なぜなら、補助金を貰う連中に限ってその金が国家のお金であること、つまり国民が汗水たらして納めた税金であるという認識を著しく欠いていることがほとんどであるからだ。そしてこのことはいかに社会福祉業界の人々が傲慢不遜な連中であることか証明しているのだ。事実彼らは自分たちが「清く正しく美しい」ことを疑おうとはしない極めて独善的な人々だ。
特に社会福祉法人の創設者たちの多くはいかに自分たちが頑張ってここまで法人を大きくしてきたかという自慢話をする傾向がある。しかし、その中に建物の建築費や人件費のかなりの部分を補助金で賄ってきたということは殆ど話そうとしない。あたかも自分たちがゼロから全てここまで頑張ってきたと言いたがるから不思議でならない。俺はこの類の自慢話を聞く度に「この恥知らずが!よくそんなでたらめが言えるな」と言いたい衝動に駆られる。彼らが自分たちのお金で0から施設を建てたなら文句はない。その施設を建てるための補助金も国が認めた金額でしか支給されないなど施設側に同情するところはある。しかし、国民の税金のバックアップで建物を建てているのは事実なのだ。彼らにそのことに対する国民への感謝の気持ちはゼロに等しい。
同じことは彼らに雇われている従業員にも言える。職員の給料にしても措置時代は税金、今は介護報酬で公金であることには変わりない。言わば職員は間接的に国民に雇われているような半分公務員のようなものだ。しかし、職員の殆どは国民に間接的に雇われている自覚はない。それどころか、彼らの認識は一般の会社のサラリーマンと殆ど変らない。自分たちが国民に間接的に雇われている立場であるという自覚はない。もし、彼らが「自分たちの給料は公金や利用者の一部負担で払ってもらっている」という恩義を感じるなら、国家や社会に対するモラルや忠誠心を感じるだろう。施設の不正に対する内部告発などはもっと増えているのかもしれない。だが、上から下まで福祉界は自分たちが補助金つまり国民の税金の世話になっていることを忘れているのが現状なのだ。もっとも、実際の公務員も公僕意識は皆無なのだから彼らを責めるのは酷かもしれない。
今回補助金の不正流用、詐取で逮捕者が出ているが、これはあくまでも「例外」のケースだ。普通の常識ある人々には衝撃的だろうが、補助金の不正流用や介護報酬の水増しが行政側にばれても殆どの場合、補助金を返還すれば終わりだ。俺が知っている事例でもある施設が介護報酬5000万を水増し請求していてそれが発覚したことがある。しかし、被害者であるはずの都道府県は水増しがばれた分だけを返還させただけだった。盗んだものを返せばそれで免罪される?この辺りは社会保険庁の年金横領事件を思わせてしまう。なぜこの詐欺師たちは逮捕されないのか?もしコムスンのように廃業まで追い込んだら、利用者が困るから・・・など施設や事業所が利用者を人質に取っているという側面もある。しかし、俺はそれだけでは説得力が足りないと感じる。実を言うと役人は施設に出した補助金が詐取されているとわかっても、何が何でも取り返そうとはしない人種なのだ。残念なことに、彼らも補助金が国民が汗水たらして納めた大事な税金だとは感じていない。補助金の不正利用を告発しても役人にとってそれは余計な仕事が増えるだけ。面倒な事には関わりたくない。寝た子を起こしたくない事なかれ主義がそうさせていると言える。結局この国の苦境同様、この問題はモラルの問題なのかもしれない。
エル・ドマドール
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