[123]プリズンブレイク(3)

2018年8月25日

このプリズンブレイクも3週目に入った。前回俺は事例を出して、プリズンブレイクに対する福祉関係者の対応の甘さを指摘した。何度も言うがプリズンブレイクを許すのははっきり言って施設側の怠慢以外の何物でもない。利用者が転倒して骨折するなどは状況によりけりだが、一概に施設が悪いとは言えない側面がある。しかし、無断外出についてはもう施設の責任と言う他ない。「施設側も無断外出されないように努力している」と弁護する人もいるだろう。だが、前号でも語ったようにあんなもの努力とは言えない。それにバンクーバーオリンピックではないがこの世界も結果が全てだ。利用者にプリズンブレイクを許し不要なリスクを負わせた事実を厳粛に受け止めなければならない。
そして無断外出を防ぐ方法だが至極単純だ。物理的に言えば刑務所並みに周囲を塀で囲み、玄関を施錠すればいい。刑務所並みというのが抵抗あるならせめて玄関の施錠をきちんと行えばいい。だがこんな簡単な事さえできないのが福祉だ。俺は無断外出を許した施設には何らかの罰則を科すべきだと思っている。そうでもしないと施設はプリズンブレイクを無くす努力をしないだろう。
プリズンブレイクを防ぎたければ出られる玄関を施錠すればいいだけの事だ。だがそれがなかなか徹底できない。前号で例に出した馬鹿施設のように完全に出入り自由にしている施設はさすがに少ない。内側から出る時はナンバーロックで施錠され、外側からは自動ドアで開くようになっているところが多いだろう。しかし、これだと外部から業者や面会者が来た時に入れ違いで利用者が出てしまうのは防げない。だったら外側も施錠して、外部から来客が来た場合はインターホンで対応すればいい。だがそれがなかなか実践できない。物理的には費用はかかるが、それほど困難な事に思えないだろう。これは福祉関係者のエゴの問題が大きい。
この業界に関係のない読者諸兄には理解しがたいが、福祉は当事者たちのエゴがあらゆる場面で災いしている事が多い。福祉関係者はどうしてもその職業の性質上、理想主義的な人が多い。彼らにとって刑務所のように施設が施錠されて、厳重に管理されている現状は受け入れられない事が多い。ましてや外部の人間に「お宅の施設は刑務所みたいだね」と言われると到底我慢できない。だから厳重な施錠管理に抵抗するわけだが、それならそれで玄関に警備員を置くなりしてきちんと無断外出がないようにすればいいだけだ。しかし、多くの介護施設は経済的に厳しいため「門番」を置く余裕がない。きちんと玄関の出入りを管理できないなら施錠をするしかないのだが、それにも抵抗する。
じゃあどっちなら満足するんだ?と非難されそうだがそういう歪んだメンタリティが福祉職員なのだ。施設の目的は利用者を人間らしく満足した人生を送ってもらうこと。笑顔で過ごして欲しいなどなど理想を語る福祉関係者は実に多い。施設の現状はあまりにも非人間的で職員の中には「自分が要介護状態になってもこんなとこには入りたくない」と言う人が多い。しかし、理想を語るなら最低限の義務は果たしてからのはずだ。利用者の安全を守る。利用者を行方不明にしない。これは刑務所のようなダメ施設でもできる事ではないのか?確かに現在の施設の中での生活はとてもじゃないが人間的とは言えるものではない。だが、空虚な理想を守るために利用者を行方不明にしてしまうのはもっと非人間的ではないか。
プリズンブレイクをされるのは施設側の責任だが、その根源をたどれば、そこの職員の歪んだプライドや理想主義の問題とも言える。何度強調しても強調し足りないが、福祉関係者の多くは理想に固着するばかり現実を直視できない人々が多い。この事はまた稿を改めたいが、利用者に一番の脅威は福祉関係者の歪んだエゴや現実逃避性かもしれない。
エル・ドマドール
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