第27回 経管胃ろう(2)

2018年8月31日

こんにちわ。永礼盟です。ご購読ありがとうございます。

今日も、杉山さんのお部屋へお伺いしました。杉山さんは、仙骨と陰嚢の部分に褥そうが出来ています。オムツ交換をし、軟膏を塗布します。体位交換をすると、肌の皮がボロボロと落ちます。その皮を掃除しながら、オムツ交換を続けます。

「杉山さん!ここ、痛くないですか?」「大分良くなっていますけど、もう少し時間がかかりそうですね!」声かけし、軟膏を塗布します。時折、腰がビクッとなるので、褥そう部分が痛いことが解ります。「ごめんなさい!痛かったですね!直ぐ終わりますからね!」「痛くねえんだよ!」ビックリしました。杉山さんが、声かけに反応したのです。ナースコールを押し、他の職員を呼んでしまいました。

「ちょっと!杉山さんが喋った!」コールをとった職員に投げかけました。すると、ドタバタと数人の走る音が聞こえ、「杉山さんが喋った?」他の職員が駆けつけます。

「杉山さん!垣田です。調子はいかがですか?」垣田君が声かけすると、「....]一点を見つめたまま何も反応がありません。「永礼さん、本当ですか?」「あら~、反応あったんだけどなぁ?」他の職員から疑いの目を向けられます。すると、垣田君の方を向き、「なんだよ!こらぁ!」そう叫ばれました。垣田君と、私で目を見開いて見つめ合います。

「杉山さん、垣田です!解りますか?」「解らねえよ!」答えが返ってくると、全員で歓喜の声を上げました。「これから食事ですからね。」女性スタッフが優しく話しかけると、「おう。早くしてくれ。」ボソボソとですが、確実に我々の声かけに反応しています。

休憩時に、職員で杉山さんについて雑談的に話し合いました。「褥そう良くなってきているよね。」みんなが思っていたようです。「体痒そうだよね。皮膚がボロボロに剥けてるもん。」褥そうの具合と、乾燥肌が気になることを語り合いました。

その日、清拭をしました。体をかきむしってしまうため、軍手がはめられています。それでも、ひっきりなしに体をかいています。「杉山さん!体、拭いていきますからね!」そう声かけし、体を拭いていきます。軍手をとると、真っ白になっています。丁寧に体を拭き、新しい着替えを着て頂きました。「杉山さん、終わりました!またお伺いします」そう言って、部屋を出ようとすると、また体をかきむしり始めます。

この時は、まだ誰も杉山さんを疑う職員は居ませんでした。しかし、すでにこの時、杉山さんは病魔に犯されていたのです。

また、あの悪夢が起ころうとしていたのでした。

2003.09.08

永礼盟