「国境なき記者団」から報道の自由度に関するランキングが発表されました。報道の自由イコール言論の自由ですから結果について興味しんしんです。この調査は167ケ国について52の質問に対し130人のジャーナリスト、研究員、法曹関係者、人権運動家が回答を寄せたものです。
コメントとして出されているのが、「東アジアと中東の国は最低」というものです。北朝鮮が最下位 167位、ミャンマー 165位、中国 162位、ベトナム 161位、ラオス 153位、サウジアラビア 159位、イラン 158位、シリア 155位、イラク 148位という按配で、これらの国々では民間のメディアが存在せず、政権に都合の良い報道しか出て来ないということになります。中国では27人のジャーナリストが投獄されており、イラクにおいては昨年 3月の開戦以来44人のジャーナリストが死亡しています。
では、日本はどのくらいのランキングにいるかと言うと42位で、なぜかチリ、ナムビア、ウルグアイと同位です。 1位はデンマーク、フィンランド、アイスランド、アイルランド、オランダ、ノルウェイ、スロベニア、スイスの 9ケ国です。国民性のイメージからも非常に論理的で合理的、かつフェアで高い水準のモラルを備えていそうな感じです。
アジアでのトップは香港で34位。ジェンキンズさんの手記が香港のメディアに掲載されましたが、理由は英語が通じるということだけではなく報道の自由さもあるのでしょう。私もこの記事を読みましたが、日本ではちょっと出せないだろうと思った部分がありました。
日本のメディアはパワフルとしながらも、悪いと指摘されたのは記者クラブ制度です。私は総合商社に勤務していましたので、会社に関するニュースは貿易記者クラブの管轄でした。記者の窓口は広報室で貿易関連のニュースに力を入れているメディアは定期的に取材に来てくださいます。また、こちらからニュースリリースを行なう場合は資料を用意して貿易記者クラブで説明を行います。たとえば、取引先と一緒に商品を開発した場合は、貿易記者クラブか取引先を担当する記者クラブで行なうか調整が必要であり、両方でやることはまずありません。こういう制度を続けている限り、記者は自分の担当するクラブで資料を集めるだけで記事は作れるわけですから、リスクを冒してまで踏み込んだ取材や調査はしなくなるのはサラリーマン記者なら当然でしょう。
私自身が経験して嫌だと思ったのは、その横暴さ、です。新聞に出してやる、テレビに出してやる、と言わんばかりの態度です。タレントならギャラをもらえますが、一般人は無報酬か粗品程度です。出たことにより何か素晴らしいメリットがあるかというとそうではなく、会社員の頃新聞に写真つきで出た後、各種セールスマンの大襲撃を受けて困った記憶もあります。いずれにせよ、メディア関連者の不祥事が相次ぐ作今、メディアの責任、あり方、高い志といったものを強く感じていただかないと報道の自由は確保されてもかえって危ないのではないでしょうか。自由と責任は対になっているものです。
河口容子