[208]読者Q&A『年次有給休暇を知らされていない』

■読者からの質問

 

父は会社から年次休暇の存在を知らされていないようです。これまでも私用で休んだことがあるのですが給与天引きされているようです。年次休暇の取得は法律で認められていますよね。本来なら本人がきちんと話し合うべきでしょうが。会社との関係がまずくなるのではないかと気にして言うことができないようです。どのようにするにが一番いいでしょうか。

 

また、週に1度日曜日しか休みがありません。公休日も仕事です。これは労働日数の基準に反していませんか?

 

■たまごやの回答

 

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

 

年次有給休暇(以下、年休)は、労基法第39条の勤務条件を満たしている場合は、自動的に発生する休暇です。その取得には、理由は必要なく、事前に宣言するだけでよいという大変強い権利を持った休暇です。

 

しかし、その年休があること、そしてその残日数を労働者に進んで教える義務は使用者にはありません。したがって、今回のケースのように、年休があることを知らず、自分の年休日数も当然知らないということが生じてしまうのです。

 

しかし、年休は請求されれば取得さなければならない休暇ですし、その休暇に関しては使用者は管理する義務があります。誰に何日の年休が残っているかどうかは把握しているはずですし、労働者が自分の年休が何日あるか尋ねられた場合は答えなければならないことになっています。

 

また、休みをとった場合でも、この「休みを年休にする」ということを使用者に伝えなければ、その日は単なる休みになってしまいます。自動で年休に充てることは使用者はする必要がないので、これは自分で請求しなければなりません。

 

また、週に2日の休日は労働基準法では定められていません。法で定めているのは「毎週少なくとも1日、または4週間に4日以上与えなければならない(労基法35条)」となっています。したがってこれは違法ではありませんが、法定労働時間を越えていれば、割り増し賃金を支払わなければなりません。また休日も決まっているのなら、休日の割り増し賃金も支払う必要があります。そのあたり実際はどうでしょうか。

 

いずれにしても、お父様は無知な経営者(あるいは知らない振りをしている)の環境にいると思われますので、まずは本人が自覚することと、総務の部署があれば年休についてそれとなく聞いてみるといいでしょう。

 

古い体質の会社の場合、長年働いている正社員には知らせないことが多く、もしパートさんなどを雇っている場合は、パートさんに年休をとっているかどうかを聞くのも一考です。パートさんは世慣れしていますから、しっかり年休を取っていることも多いからです。

[207]読者Q&A『昇給制度の変更による減給』

■読者からの質問

 

先日、今まであった定期昇給が無くなり、成果主義主体の評価制度を導入しての定期給与改定に変更するとの書面1枚での通達があり、各部、各課でまちまちだった能率手当(8,000円に)を一律化するという名目で手当を下げられてしまいました。

 

そもそもこの手当は会社側が基本給(賞与に反映される為)を定期昇給で上げたくない変わりに手当を作ってそこを定期昇給で上げてきた手当です。下は8,000円から上は40,000円もらっている人がいました。

 

上司に相談しても役員会で決まった事だし俺も下がったからからと言われ話になりません。ちなみに労働組合はうちにはありませんし、監督署に相談しに行ったら、色々な過去の裁判結果などを見せられ、突き詰めれば違反になる、と言われて、何とかしてあげたい気持ちはあるけど、監督署では判断できないと言われてしまいました。あっせん申請という方法で裁判しなくても一日で話がつくやり方もあると説明されましたが、そんな事をしたら会社にいずらくなると思いますしどうして良いかわかりません。このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか?

 

■たまごやの回答

 

お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。

 

景気は上向いているものの「給料を下げられた」という事例はやはり多いようです。今までは固定給だったものを、歩合給あるいは成果報酬などの仕組みを変換することで業績に見合った適正な人件費を目指すもので、これ自体はなんら問題はなく、むしろ好ましいことといえます。

 

問題なのは、コストを削減する意味だけで成果報酬を採用する企業です。そのような企業は、固定給より成果報酬のほうが下がる場合は成果報酬を採用し、業績が上がってきて成果報酬が上がるようになると今度は安価な固定給制度を採用しかねません。このあたりは使用者のモラル如何ということになります。

 

しかし、本来使用者と労働者の間の労働契約は、お互いの納得の上で決められ、その合意があって成立するものです。契約には、労働時間や賃金が含まれますが、賃金についても合意があって初めて成立します。賃金を上げるも下げるもお互いの合意があれば法的にはなんら問題ありません。お尋ねの場合も、合理的な理由があれば給与体系の変更、就業規則の変更、そしてその結果としての減給も認められます。

 

しかし折衝となれば使用者と労働者ではおのずと力関係が違いますから、そのために労働組合があるわけです。賃金を上げる場合には、ほとんど問題にはなりませんが、賃金を下げる場合には闘争になるでしょう。労働組合の出番です。

 

労働組合がないとのことですが、通常残業などが行われているとすれば三六協定が必要なので、労働組合は形だけでもあるはずです。しかしそれが機能していないとすれば複数人数で交渉するしかないでしょう。

 

いずれにしても、まずやるべきは交渉です。粘り強く行いましょう。どうしても合意が得られない場合には、労働契約は成立しませんから、その場合は退職も視野に入れましょう。辞める勇気がないのでしたら条件が悪くとも「合意」するしかありません。それを「泣き寝入り」ととるか「合意した」ととるかは本人次第です。

 

辞めるということは渦中にいるときは大変なことですけれど、いざ辞めてしまえば、よかったと思えることも多いものです。新たなチャンスはいくらでもあります。

[206]ホワイトカラーエグゼンプション

ホワイトカラーエグゼンプションが物議をかもしています。ホワイトカラーエグゼンプション(White Collar exemption=ホワイトカラー労働時間規制撤廃制度)とは、いわゆるホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を適用免除することをいいます。

今までは8時間労働という縛りがありましたが、これを開放し、ホワイトカラー全員を時間管理ではなく成果管理に変更しようとするものです。2005年6月に日本経団連が提言を行ない、2006年6月に厚生労働省が素案を示しました。早ければ2008年度にも法律として施行される可能性がありますが、まだ決まったわけではありません。

今までの労働管理は時間管理がベースにありました。労働基準法でも謳われているように1日あたりの8時間労働がそれです。しかし、この時間管理は工場など生産現場では適合しますが、業態が多様化している現代社会では、制度そのものがそぐわなくなっている場面もあります。顧客に合わせて商談や打ち合わせを進めなければならないホワイトカラー労働者は、時間ではなかなか管理しきれないものです。

ホワイトカラーとは「管理職=白いワイシャツを着ているイメージなので」という意味ですが、管理職自体は年棒制度などで残業を含めた報酬になっています。しかし、その内容は8時間労働を基準として、残業分を見越した年棒になっているはずです。したがって大幅に労働時間が増えた場合は、年棒とは別に残業代を支払う必要があります。

しかしホワイトカラーエグゼンプションが導入されれば、会社は時間管理をする必要がないということになりますから、いくら労働時間が長くてもそれは個人で管理するべきもの、ということになります。

経営者側としては、達成すべき成果をもとに時間管理無しで経営計画が立てられます。また残業の増加による賃金変動を考慮する必要がありません。また、対象労働者の健康管理義務もなくなるのも経営者側のメリットといえます。

労働者側としても、同じ成果を導いた場合に時間をかけて残業してやった方が賃金が高くなるという不公平感がなくなり、労働者にとっても自由な時間の使い方が可能になるというメリットがあります。

問題点としては、短時間で成果を上げた労働者に対し、賃金はそのままで次々に仕事を与えてしまうという懸念があります。また時間管理がありませんから残業という概念も生じないことを逆手にとって、無賃金残業を合法化しようとする、という批判もあります。また最大の懸念は、労働時間を管理しないことによる労働者の健康管理がずさんになるという懸念もあります。

労働時間8時間というのはそれ自体長い歴史があり、人間の生活サイクルに密接した「8時間」ともいえます。この「8時間」が持つ意味ということも深く考えなければなりません。8時間労働という縛りが無くなった場合に、どのように人間の精神を含めた健康管理を確立していくのか、ホワイトカラーエグゼンプションの導入にはまだまだ議論が必要です。

[205]女性ホステス募集は不可?

男女共に働きやすい環境づくりへと制定された男女雇用均等法は募集や採用の際に女性であることで不利益を受けないようにという意味合いを持った法律です。

募集の際に女性であること、男性であることを採用の要件にしたりする直接差別だけでなく、身長や体重、世帯主であることを要件とする、など、職務に関係ない要件で募集する、というものを禁止するものです。

前回の改正案(1997年)は実際に不利益を受けている女性を対象とした「女性に対する特例法」という意味合いが強かったのですが、今回の改正案(2007年4月1日施行)では、男女双方に対する不利益扱い・差別を禁止する条項が盛り込まれているのが特徴です。

ただし、最近この差別に敏感になりすぎるあまり、重労働系の募集も男女や体力のあるなしを表記してはいけない、ととられているようですが、それは間違いです。体力勝負の重労働系はそれに見合った募集や採用をしてかまいません。

また女性のホステスを売り物にしたスナックなどは女性のみを募集しても男女雇用均等法に抵触はしません。男女の区別が仕事に関係ある場合は、男もしくは女をあえて募集しても構わないのです。

またよくある誤解として、募集のときだけ男女別をなくして、面接採用のときに女性を採用するあるいは男性のみを採用するのは「可」として解釈している場合もあるようですが、男女雇用均等法は、募集のときだけでなく採用のときにも差別をしてはいけないこととなっていますので、そのような解釈・採用をしている会社の人事担当者は認識を新たにする必要があります。
均等法改正で平等は可能か
労働市場とジェンダー―雇用労働における男女不公平の解消に向けて

[204]常時10人以上とは?

就業規則の作成について、労働基準法は89条において、労働者が常時10人以上の場合は作成しなければならないとしています、その場合の「10人」とはどういうことを言うのでしょう?

労働基準法でいう常時10人とは「1日あたり」とか「1時間あたり」とかいう決め方はしていません。パートタイマーやアルバイト等を含めた全ての労働者が10人以上であれば「10人以上」として扱います。たとえば週1日しか働かないアルバイトもそれが継続していれば人数に含めます。

含まれないのは、まず派遣社員。これは派遣元の労働環境にありますから、人数には含めまません。また、役員。これも含めません。

臨時の日雇い労働者。これも常態ではありませんので、人数に含めなくてもかまいません。ただし日雇い労働者であっても、それを計画的に常態として雇う場合には人数に含めるのが妥当と思われます。

参考条文:

【労働基準法第89条】
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ
高橋 伸夫
日経BP社 (2004/01)
売り上げランキング: 1,562

amazonで「就業規則」を探す
楽天で「就業規則」を探す