[80]交際費(5)福利厚生費と交際費

2013年6月9日

福利厚生費とは従業員全員の教養を高め、心身を豊かにさせ、生活および労働環境を改善し、そして労働意欲を高め、明日への活力とするために支出するものです。ひいては会社に利益をもたらすものとして経費とする性質のものです。

したがって福利厚生費は全従業員を対象とするものでなければなりません。一部特定の者のみを対象とするものは、差別的恩恵行為として福利厚生費の理念から外れることになるためです。

なお、全従業員といっても、すべてが参加する必要はなく、参加不参加は個人の都合であり、結果として全員参加とならなくてもかまいません。全員参加できるように戸口は開けておくようにしておくことが必要ということです。

また、社会通念上、福利厚生費として通常要する費用であることが必要です。

ただし、この「社会通念上」ということが「常識的にみて」ということになるのですが、常識というのは時代によって変化するものですから、ここらが税務当局とのトラブルになるところといえます。本来、具体的に決めなければならない要件ではあります。

租税特別措置法第61条の4では、損金不算入の除外として福利厚生費にあたる部分を提示しています。

「専ら(もっぱら)従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用」

この場合「通常要する費用」かどうかが問題になります。特に「旅行」については国内の1泊旅行と海外旅行とでは雲泥の差があります。これも通達では実態に即して判断するように、としていますが、具体的に福利厚生費の範囲が決められています。

所得税の通達:

・旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合は目的地における滞在日数による)以内であること。
・当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場・支店ごとの場合はその工場・支店における従業員等)の50%以上であること。

期間や参加要件については上記通達がありますが、一人当たりの金額には触れていません。これは一説では10万円が限度であるとか、18万円の旅行費が認められたとか、それほど豪華でなければ4泊5日内の範囲で金額は関係ない、という説まで色々です。ですが、エコノミークラスを使った通常のパッケージツアーであれば、福利厚生費として認められると考えられます。

残業した従業員を連れて、今後の打ち合わせを兼ねて飲みに行く、というのはもちろん福利厚生費にはなりません。交際費になるかどうかは、その「打ち合わせ度・会議度」によります。現状では合計で1万円以下、1人当たり3,000円以下は交際費としないというのが通例ですが、今度はもしかすると厳しくなるかもしれません。