tax[113]自社株相続
会社の経営者にとって、自分の会社の業績が上がり資産が増大していくことはたいへん喜ばしいことです。金融機関や得意先に対しても会社の信用を得ることに繋がります。しかし、こと相続税に関しては、これが思わぬ落とし穴になることがあります。
自社株の相続税評価は、非上場の同族会社の場合、目安として純資産価額で評価されます。純資産価額とは、簡単に言えば、会社の総資産から負債を差し引いたもの、すなわち自己資本のことです。決算書の貸借対照表における資本の額の合計がそれに当たります。それに会社の土地などの保有資産の含み益があれば、その一定額が加算されたものが相続税法上の純資産価額です。
業績を上げて内部留保が大きい会社の純資産価額は相当高くなりますが、これを相続し相続税を支払うのは並大抵のことではありません。
例えば一億円の財産を相続したとしても、それが現金預金であれば、それで相続税が払えます。土地であればそれを売って払うか、物納することができます。しかし、自社株では売ったり、物納することはかなり難しいですし、それをしたら肝心の事業の承継ができず、会社の存続自体が難しくなります。
経営者の子供が仮に10人いたとして、それぞれ自社株を相続して、相続税を支払うために売却したら、会社は跡形もなくなってしまうでしょう。
内部留保利益の大きい経営者が相続を考えるならば、早めに自社株式を相続予定者に贈与しておく、あるいは相続税が払えるだけの現金預金を用意しておく必要があります。この準備ができないうちは経営者はおちおち死ぬこともできません。