ガソリンエンジンはガソリンを気化して空気と混ぜて圧縮し、それを点火プラグでうまくタイミングを合わせて着火します。もしそのときに点火プラグが着火する前に自己着火してしまったら、エンジンはうまく動きません。
ところがガソリンが混ざった混合気を圧縮すると、圧縮熱が高くなるために思わぬところで自己着火することがあります。この自己着火のしにくさを表したのがオクタン価です。オクタン価が高いと自己着火しにくいため、エンジンの圧縮比を高めることができるので、その結果馬力がでます。パイパワーエンジンがプレミアムガソリンを指定するのは、オクタン価の高いガソリンを使って圧縮比を稼ぐためなのです。
では、ディーゼルエンジンはどうでしょう。ディーゼルエンジンは点火プラグを使わず、燃料である軽油を自己着火させることでエンジンを動かします。したがって軽油はガソリンとは違って自己着火しやすさが求められます。それを表したのがセタン価です。
セタン価は高いほど良い燃料とされます。セタン価が高いと次のような効果があります。
 (1) 始動性がよい
 (2) 排気ガスがきれい
 (3) 馬力がアップする
 (4) 燃費が向上する
 (5) エンジンがスムーズで音が静か
軽油は販売する場所の気候に応じて5種類に分類されていますが、平均的なグレードのセタン価は約53~55程度です。また添加剤を混合して、よりセタン価を向上させた軽油を「プレミアム軽油」として販売している石油メーカー(日石三菱)もあります。
ディーゼルエンジンは、改良が進み最近では直噴式がほとんどです。直噴式のエンジンはよりセタン価の高い燃料を要求しますから、信頼のおけるスタンドで給油することが必須です。妙に安い軽油を入れるとエンジンを壊すことにもなりかねないので注意しましょう。
ところで、欧州ではディーゼルエンジンが人気です。地球温暖化や酸性雨対策にとってガソリンエンジンは致命的であり、代わってディーゼルエンジンの開発に熱心です。その結果、ディーゼルエンジンの進歩はめざましく、特に最近ベンツに搭載された新しいディーゼルターボエンジンは、静かでパワーがあり、それと言われなければガソリンエンジンと間違えるほどだといいます。
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより燃焼効率の良い完成された内燃機関とも言われており、今後軽油に代わる燃料の開発や、ハイブリッド技術の発達によりますます期待されているエンジンなのです。
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