第6回 スタッフを困らせるYさん(その3)
こんにちわ永礼盟です。
Yさんの嫌がらせは、毎日続いていました。私以外のスタッフには、とてもいい子を演じられているように感じます。そうではないのかも知れませんが、その時の自分の精神状態では、どうしてもそう言う風に感じてしまうのでした。
自分の中に疲れもありました。当時の御入居数は、21名でした。日勤のスタッフは、早番、中番、遅番を含め、多いときで四人。少ないときで、3人でシフトを組んでいました。早番が2人で、遅番が1人しかいなければ、早番の人が残業をしなくては、とてもじゃいけど、業務が回らない状態でした。私から見たら、とても辛いシフトだったのですが、スタッフを増やす事を、会社は嫌がりました。勿論、募集はかけてくれていたようですが、なかなか集まらないのが実状だったようです。
少し体調が悪くても、1人休むと業務が回らなくなるのは、スタッフ全員が分かっている事です。当然、一人一人の疲労はかなりの物だったと想像出来ます。私も、今日は行けないと言う日がありましたが、なんとか出社し、勢いに任せて御入居様と接した事を思い出します。
そんな辛いある日、私と、新しく入ったスタッフ1人で午前中の業務を回さなくてはならない日が出てきました。この状態を、Yさんは見破った様子で、食堂でお茶を楽しまれていたのに、自分で部屋に戻られました。他の方のトイレ介助をしながら、部屋に帰る姿を見て、とてもイヤな予感がしました。
そう言う日に限って、排泄介助が大変だったりします。トイレにお連れすると、間に合わない状態が続きました。人数不足から、業務の流れが押し押しになっていたためでした。慣れていない新スタッフは、食堂の誘導に時間がかかってしまったようで、遅番で私が出社したときに、まだ朝食を食べている人が数人居るという、異常な状態でした。すぐに、業務を回そうと駆けずり回しました。それが、さっき述べた排泄介助の光景です。
排泄介助をしていると、ナースコールが鳴り始めます。部屋番号を見ると、Yさんでした。「お茶飲みたいから、食堂に連れて行って!」そんな要求でした。私は、Yさんがご自分でお部屋に戻られたことを確認してましたので、「Yさん、もうお茶は飲まれていますので、お昼ご飯の時にお迎えに上がります。」そう答えました。「分かった」と言ってくれましたが、ナースコールは鳴りやみません。排泄介助をしていても、ご家族対応していても、そのコールは止まることを知りませんでした。早くYさんの部屋へ行かなくては。その思いは、気持ちを焦らせます。
やっと落ち着いて、Yさんの部屋をお伺いすると、「散歩に連れて行って。外に出して。」そんな訴えをされます。散歩や日向が大好きな方なので、その気持ちはよく解ります。しかし、スタッフの人数も少ないのと、外は雨だと説得を試みます。その会話の途中も、ナースコールは押しっぱなしの状態。一生懸命説得を続けますが、「分かりました。じゃ、トイレに連れて行って。」散歩の次は、トイレに行きたいと言われます。
Yさんのお部屋で、そんな対応をさせていただいていると、違う方がナースコールされます。普段なら、他のスタッフに対応をお願いするのですが、今日は、無理です。全てのナースコールに出て、全ての対応をしなくてはなりませんでした。
Yさんにトイレに座って貰い、他の方のお部屋へお邪魔します。すると、Yさんの居るトイレからコールが鳴ります。すぐにYさんの所へ戻ると、「出ねえ!部屋に帰らせて」と訴えられるので、お部屋にお連れします。また違うお部屋のコール対応をしていると、Yさんに呼ばれます。Yさんの部屋に行くと、ベッドは尿でビチャビチャになっていました。
こう言う行為は、前からありましたが、このタイミングでやられると、とても困りました。私は、「今日みたいな日に、こう言うことをされると困ります。」腹の中では、複雑な気持ちが溢れていましたが、それを押し殺して、発言しました。Yさんは、私に向かってこう言い放ちました。「俺の勝ちだな」その時に、Yさんは自分のストレス解消に、私をいじめている事が分かりました。それでも、シーツとズボンを替えようと、シーツを剥ぎ、ズボンを脱いで貰うと、「俺を裸にして何をするんだ?俺を裸にしたって、家族に言いつけてやるからな。」そう自分に叩きつけてきました。嗚咽と、涙を我慢して、「ズボンを替えさせて下さいね」と声を振り絞った。
この時から、私は、怒れなくなってしまいました。怒ろうとすると、「ハァ~」と無気力になってしまうようになりました。それから、Yさんの欲求は、他のスタッフにも及ぶようになっていきます。
Yさんは、一体私をどうしたいのでしょう?
2003.3.24
永礼盟