[110]マーセナリー(下)

2018年8月25日

先週は派遣がいかに危険なものか強調した。もう一度強調する。派遣はやがて家を食いつくし破壊してしまう白アリと同じだ。派遣は「利用される」存在だと見下している人が大部分だろうが、派遣を甘く見ると痛い目を見る。かつて西ローマ帝国を滅ぼしたオドアケル同様、派遣に依存すれば組織自体を破壊されてしまうだろう。俺の主張を派遣への大げさな偏見と思う人もいるかもしれない。今回は派遣がなぜ危険なのか?その具体的なデメリットを解説しよう
(1)技術の低下
これはすでに製造業でも同じことが起きている。介護の現場でも同じだ。でもほとんどの派遣を雇う側は技術の低下を招くことを認識していないから困りものだ。例えば介護現場で副業のアルバイトで働きたいと応募するとほとんどの施設はそれを嫌がる。その理由を問われると必ずこんなことを言い出す。
「個別個別の利用者によって介護の方法は千差万別だから覚えるのに 時間がかかるし、腰かけ程度の気持ちじゃ勤まらない。利用者の命を預かる介護施設はそんなに甘くない」
確かにその内容は正論だ。しかし、それならどうして派遣は雇うのだろうか?アルバイトの副業は駄目で派遣はいいなら二重基準もいいところではないか?派遣職員の中には複数の施設を掛け持ちしている人もいる。
それはなぜOKなのか?これは福祉産業に従事したことがない方にはわかりにくいかもしれないが、介護においてまず「即戦力」はあり得ない。例え10年の介護経験があっても、未経験の新しい施設に来たヘルパーは初心者同様まず使い物にならない。なぜかと言うと、利用者が変わるとそれまでの仕事のやり方も一から覚えなおさないといけないからだ。そこの施設の介護方法、利用者ごとに違う対応を覚えるだけでひと月ぐらいは簡単に過ぎる。慣れるまではベテランと同伴だから、1か月ぐらいは殆ど戦力にならない。これでどうやって派遣が即戦力になり得るだろうか?それどころか派遣職員の場合は下手すると1,2回の同伴で独り立ちさせられる事がある。勿論指導が不十分なのは承知の上でだ。技術的にも未熟なままで現場に放り込まれて、下手すると介護事故が頻発する可能性もある。これだけでも危険すぎるが、技術の低下は正規の職員も含まれる。派遣がいると、生え抜きの職員のレベルも低下させてしまうのだ。その理由を一言で説明するのは難しいが、それはこれからの文章を読んでいけばおのずと分かるだろう。
(2)モラルハザード
先ほども少し言及したが、派遣が入ると施設全体のモラルハザードが起きる。どの経営者も目に見える数字には注意するが、案外目に見えない事には注意しないものだ。このモラルハザードは緑内障のように誰も気付かない内に進行してしまうから恐ろしい。
なぜ派遣が入るとモラルが低下するのか?
それは派遣を雇うこと自体が施設や事業所の安易なずるさや怠慢さ、不道徳さの表れに他ならないからだ。今の日本社会では派遣を雇うこと自体、当たり前のように思われているが、ここで俺ははっきり言っておく。派遣は現代の被差別部落制度もしくはカースト制度だ。これほど不道徳でモラルに反したものはない。雇用者がこんな不正な事をしていて、働く側がきちんと働くことを期待する方がおかしい。派遣が入った後の職場のモラルは間違いなく崩壊に向かう。備品や金銭の横領が蔓延り、嫌な仕事を派遣に押し付ける職員が出始める。疑心暗鬼やストレスにより派遣をターゲットにした職場内でのいじめやモラルハラスメントなどが起こり、人間関係も険悪になっていく。こんな状態では利用者の事など置き去りだ。
派遣だってモラルを維持することはできない。一般企業では派遣社員が個人情報を流出させる事件があった。個人情報の保護といくら言っても事務で派遣を使う限り、派遣が個人情報を見る機会はいくらでもある。福祉でも同じだ。利用者情報など派遣で働いていたらいくらでも手に入る。冷遇されている派遣職員が魔が差したとしても責められようか?派遣を雇用する方が悪いだけだ。
(3)士気の低下
どこでもそうだが外部委託をしている施設、派遣がいる施設は必ずモチベーションの低下を招いている。そしてモチベーションの低下は必ず施設全体のパフォーマンスの低下を招く。以前にはできていたことができなくなってしまうのだ。冷遇されている派遣社員が士気が低いのは仕方ないかもしれない。しかし、派遣が来ると必ず生え抜きの職員の士気とパフォーマンスも低下してしまう。なぜだろうか?
簡単に言えば競争原理がなくなってしまうからだ。身分が下の派遣社員がいれば、正規職員はいろいろ楽ができる。嫌な仕事は派遣に押し付ける事ができるし、組織での地位も最低でも派遣よりも上だから安心だ。こんなぬるま湯の環境では正規職員は堕落してしまう。頑張っていい成果を出そうと努力をしなくなるのだ。現に一般企業でも業績が悪くなると、まず派遣を切って雇用調整している。しかし、これでは正規職員は頑張らなければ蹴り落とされるという緊張感を持つことができないだろう。
そしてそのようなアンフェア極まりない「身分制度」のある組織はどうなるのか?それは歴史でも明らかなように活力がなくなり、衰退を招いてしまう。うまくいっている組織がどんなものかと言えば、それは実力さえあれば誰もが公平に報いを受けることができる「機会の平等」を保障された組織なのだ。
ここまでかなり長くなってしまった。この続きはまた来週にしよう。
エル・ドマドール
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