【第11回】特別養護老人ホームの実態(1)

2019年3月18日

前回まで、有料老人ホームの枠内を基本として世間話を提供してきたが、有料老人ホームは、どこでだれに介護を受けるという自己決定を迫るられた時の選択権の幅がある可能性の存在する施設ということになる。半ば、断腸の思いも含めて居を介護してもらえる空間にうつすという、本来的なイメージでいけば、特別養護老人ホーム(介護保険法でいう介護老人福祉施設)が従来のいわゆる老人ホームの一般の方がイメージに施設ということになろうか。

介護保険法的には介護老人保健施設、介護療養型医療施設とこの特別養護老人ホームの3つが「老人ホーム」という施設扱いになる。よって、入所者のADLもこの3施設はほぼ似通っている。老人ホームといえば?という問いに答えるにはわかりやすく説明もできよう。そのなかで、わざわざ有料老人ホームの話を中心にここできたのは、有料老人ホームは介護保険上は在宅扱いであり、利用者の対象のADL層が極めて幅広いからである。とはいえ、特別養護老人ホームの四方山話を知りたいのは、これからの高額な介護保険料という保険料を支払っていく、読者層の大半をおそらく占める、中高年の希望であろう。

そんなわけで、排泄の話を話題にしながら、特養に舞台を移してみよう。我が家の室内犬の話をして恐縮だが自分のトイレをする場所は当然心得てしつけされてきており、トイレというスペースで基本は排泄をする。けしてどこにでもするというものではない。ただし、トイレスペースのシートの交換がなされる前に再び、排泄を催した時は、すでに使用済みのトイレでは絶対しない。小水のしみがついている場所はせめてさけて、まだシートが汚れていない部分で排泄する。

また、排泄したシートや大便の上はけして踏んで歩くようなへまはしない。よけたり、飛び越えて歩いている。これはどの家の犬にも話を聴いてみると共通しているみたいであるが、すごいのは、長時間の留守番や叱られてすねたときなどの精神状態があまりよくない時の排泄は、ところかまわず、部屋のあっちこっちやわざとみんなが出入りする入り口ドア付近にひそやかにする。まさにその仕掛け方は痴呆のある高齢者の不潔行為につながる排泄の仕方なので、いつも感心しながら排泄物を片付けている。

で、話が人間に戻るが、オムツという状態は、本来不快なものであるのは言うまでもない。どんなにおしりさらっとシートや高分子の吸収力のある素材が開発されてきてもあまり変わらない。人間の日常生活としては、もともと不快な必要としなければよい快適なものがオムツということになる。それをつけるのがまずいやだというのが普通で、つけた状態で排泄をするというのに抵抗があり、さらに排泄したらただちに外してもらいたいという気持ちがごく普通だと考える。

わたくしめのたまに担当する初心者のための介護教室などは、オムツを本当に装着してもらって一晩寝てもらうというところから始まる。快適に眠れるのであろうか?聴いてもつまらない質問だが、快適なわけがない。大半の人はムレムレで、がそごそで、お尻がもこもこだと訴える。一番性能がいいと言われている高価な紙オムツを利用してでもである。それから、朝目覚めたら、横になったまま小水を排泄してもらう。前の晩たくさん水を飲んでもらうとなお楽しい。

いきおいよく出る憔悴は背中まで回ってしまうことがしばしば起こることと、あて方や性器の向きでとんでも無い方向に小水が漏れる。背中のオムツに少しでも上の下着のすそなんか重なっていればもう、毛根現象であっというまに背中のシャツがじーんと濡れてくる。で、そのまま排泄したおむつを外さずに横になってもらっている。もう、これには絶望的な雰囲気である。女性なら生理の時、ナプキンを使い汚れたら、ただちに交換したくなる感覚が一番近いだろうか。ま、いずれにしても、赤ちゃんのしているオムツと高齢者のオムツは、ここまで「不快」という点までは同じだろうと思う。次回は、オムツの話である。

2005.10.02