実は先週から、私はインドネシアとブルネイに出張をしております。来週からはこの2国について最新情報をお届けする予定です。
さて、SARSという不測の事態に見舞われ、社会主義国特有の隠蔽体質や中国人の個人主義といった不安要因が一気に表に現れ、中国一辺倒であった経済界も ASEAN諸国を見直す動きが出てきています。奇しくも今年は「日本 ASEAN交流年2003」(1月30日号でふれております)でもあり、マスコミでもASEAN諸国が取り上げられることが多く、また多くの記念行事があります。
私は幸い国際機関の仕事で ASEAN諸国とはかかわりが深く、また香港にビジネスパートナーを持って中国とのビジネスもやっていることから両方を常に冷静に比較することができますし、また ASEAN諸国と中国の貿易の橋渡しも模索し始めております。
最近までの報道によれば、あたかも生産も中国へ一極集中し、また市場としても中国を狙わなければ「バスに乗り遅れる」かのように思えますが、対中投資に比較し、ASEAN諸国全体への日本の投資のほうがまだまだ金額が大きいのです。また、JETROの貿易統計によりますと、日本の輸入は中国からと ASEAN諸国全体からとがほぼ同じ、逆に輸出はASEAN諸国全体向けが中国向けの約2倍あります。中国とASEAN諸国の貿易はASEAN諸国全体が輸出超となっています。つまり中国はASEAN諸国に対して買う方が売るより多いという数字になっています。
中国というひとつの国と ASEAN諸国という国の集まりを比較するのはおかしいではないかとおっしゃる方もあるでしょうが、ご承知のように中国は広大な土地にたくさんの民族、言語、習慣を持っております。私が最近知り合った香港人は中国に海外ブランドの売り場を 200ケ所以上持っておりますが、同じブランドであっても地域ごとに売り場の色やデザイン、販売員のユニフォームも変えています。日本では想像もつかないことです。また、貧富の差が世界一大きい国でもあります。
一方、 ASEAN諸国も多彩という点では中国にひけを取りませんし、それぞれのお国事情もまちまちですが、現在FTA(自由貿易協定)の協議が積極的になされています。域内でもっと物の行き来を自由にして共に栄えましょうという発想です。もともと自由主義経済という点では中国よりは先輩ですし、欧米の統治下にあった国がほとんどで西洋的なものの考え方にも慣れています。言語能力にもすぐれています。また、西洋文化と伝統的な文化を上手に組みあわせるセンスも持ち合わせています。タイの通貨危機以来、中国に話題をさらわれてしまった感のある ASEAN諸国ですが、まだまだ底力と連合への夢を感じさせます。
河口容子