[102]薬害

読者諸兄は49号「眠れぬ人々」と50号「薬物中毒者」の内容を覚えているだろうか?それらで俺は睡眠薬や精神薬の恐ろしい副作用について要点は書いたつもりだった。俺はもう二度とこのテーマを書くことはないだろうと思っていた。しかし、ある読者からのメールでそれが間違いであったことに気付かされた。この方は眠れないという理由で処方された睡眠薬を飲むようになった。しかし、その副作用はひどく、仕事まで辞めるはめになってしまった。その内容を本人の許可のもと掲載する。
「 本当に睡眠薬を呑まされてからまともに眠れた経験がありません。睡眠薬の眠りはひどいものです。 しかも段々効かなくなってくる。 副作用もとてつもなく多くひどいものです。 どうしてこんなものを医者が出すのだと思います。 私も一時的でもともとたいした不眠でなかったのに他人に紹介された医者に行って、 副作用や依存性の話をされないまま睡眠薬を飲むことになってあっという間に薬が逆にひどい不眠になってしましました。 飲むんじゃなかったと大変後悔しました。 仕事をやめざるを得なくなり どうしたら良いのか困っていますひどいさまざまな副作用と不眠になってしまい 中断するとほとんど発狂状態になるくらいの辛い日々を送っています。 多くの医者は薬を出すだけです。 エルドマールさんのおっしゃることは本当に良く分かります。
でも一度このような状態になってしまった人間はもう救いようがないのでしょうか。 段々と朽ちていく地獄に耐えるしかないのでしょうか。 どうすればやめられるのか。 いろいろ徐々に少なくしていくとか、長期に変えて隔日にしていくとかいろいろ試 したりはしています。 でも徐々にやめるより耐性のつくほうが圧倒的に早く、 もともと睡眠薬でろくに眠れてないので減らすにも減らせなく、いきなりやめると全く眠れない上に体もひふもぼろぼろになり食べられない排便もできないの地獄がきます何回か突然切るのを試したりはしていますがあまりにひどい状態になり。 何とかならないものなのでしょうか。 対処してくれる良い医者もみつかりません。 やめることはできないのでしょうか。 なんとかならないものでしょうか?」
あまりにもひどすぎる。善良な一人の人生をここまで苦しめ、狂わせる薬害の現実に俺は全身から噴き立つ怒りを感じざるを得なかった。そして、薬に苦しむリアルな被害者の苦しみを伝えられていない自分自身の怠慢が許せない。世間は押尾学や酒井法子の麻薬や覚せい剤の蔓延には厳しい反応を示す。また一般社会に大麻が蔓延していることについては報道やテレビで警鐘がよく鳴らされている。しかし、本当の危機はすぐそばにある。それは医療という仮面を被って私たちを誘惑に引きずりこもうとしているのだ。
だからここで俺は断言する。どうして麻薬や覚せい剤で逮捕される人々はあんなに要領が悪いのか?そんな法律を犯すリスクを冒さなくても同じような薬は病院に行けばいくらでも手に入る。しかも警察に咎められず、7割引の低価格でだ。医師が処方箋を書き薬剤師が処方して手にする薬剤(特に中枢神経に働く睡眠薬や精神薬)は裏通りで非合法に買える合成ドラッグや覚せい剤、大麻と全く変わらない。依存症があるのも同じ、内臓や循環器系にひどいダメージを与えるのも同じ。そして、まともな社会生活が送れないぐらい錯乱や精神的不安定を巻き起こすのも同じなのだ。非合法な薬物を駆逐するのは結構だ。しかし、本当に追い出さなくてはならないのは無節操に睡眠薬や抗うつ剤、精神安定剤を出したがる医師や薬剤師どもだ。
あのマイケル・ジャクソンも同じように薬物の犠牲者かもしれない。彼の死亡時にマーレー医師から受けていた投薬内容は常人には理解しがたいものだった。死亡した日にマーレー医師が投与した薬剤と時刻を紹介しよう。
午前1:30 バリウム10mg(精神安定剤)
午前2:00  ロラゼパム2mg(精神安定剤)
午前3:00  ミタゾラム2mg(鎮静剤)
午前5:00  ロラゼパム2mg(精神安定剤)
午前7:30  ミタゾラム2mg(鎮静剤)
午前10:40 プロポフォール25mg(麻酔薬)
呆れて言葉がないのはまさにこのことだ。何度も精神安定剤や鎮痛剤を与えた挙句に麻酔薬まで使うとは常軌を逸している。アメリカでは日本以上にすぐ薬物に頼る傾向が強いが、この滅茶苦茶な投与はさすがに遺族の怒りを買った。マーレー医師は殺人の疑いでいつ逮捕されるかもわからない状態になっている。
医師のでたらめな処方も十分犯罪的だが、特に薬剤師の不作為は許されるものではない。彼らは不合理な処方箋について、処方箋を書いた医師に問いただす「疑義照会」の権利があるにも関わらず、薬物乱用になんら歯止めをかけていない。医薬分業制にしたのは医師の誤った処方に薬剤師が歯止めをかけるためだ。しかし、現在まで医薬分業は患者に余計医療費負担をかける制度にしかなっていない。薬局で手渡される薬剤情報などはっきり言って紙の無駄遣いだ。あれにはめまいなど軽い副作用については記載してあるものの依存症、アナフィラキシーショックや肝臓障害、心筋梗塞など伝えるべき重篤な副作用についてはほとんど書かれていない。
俺は実際薬局に働く人間に聞いたことがある。
「君たちはなぜきちんと患者に副作用について教えないんだ?患者をだましているのと同じじゃないか?」
「そんなもの患者は聞きたがらないね。必要なら本なりインターネットで調べればいいだろ」
と開き直った答えが返ってきた。残念だが、これが薬剤師のリアルな実情だ。彼らの言うことなど信用してはならないのだ。俺は無節操な投薬を行う医師や薬剤師は免許はく奪の上、傷害罪で逮捕するべきだと思っている。だが、今までもこれからも医師や薬剤師が過誤が原因で逮捕されることはないわけではないが、ほとんど不可能に等しいだろう。彼らは不条理なほど守られている。普通トラックの運転手が人を轢いて死亡させた場合、業務上過失致死で逮捕される。しかし、医療の世界では恐ろしいことにそれすらも21世紀になるまでありえなかったのだ。法律が守ってくれないなら、自分たちで身を守ることが大事なのだ。
薬害に対しては医療従事者に責任があるが、患者の方にも問題がある。前述の薬剤師はこうも語っていた。
「被害者面しているけど、患者だってお互い様だよ。現にきちんと副作用を余すところなく教える薬局と適当に取り繕うところとどちらに患者が処方箋を持ちこむと思う?後者の方だよ。適当に副作用ごまかす方が丁寧で親切だと評判になるんだ。副作用のない薬なんて科学的にみて有り得ない。そんな現実すら受け入れないのに副作用の説明をできると思うか?こちらも商売だから、患者さまが望む説明をしてさし上げてるのさ」
不躾なセリフだがこの薬剤師の言い分にも一理ある。患者の方も自分の健康に対しては医療従事者に任せっきりにするのではなく、最低限の医療知識は得るようにしなくてはならない。よく医師に「今飲んでいるお薬は何ですか?」と聞かれて「わかりません」と答える患者は多いが、全く問題外だ。自分が何の薬を飲んでいるのか?どんな効果と副作用があるのか?元々どんな目的で処方されたのか?それぐらいの情報は薬剤師に頼らなくても本やインターネットで調べられる。
だが、インターネットや本で薬剤情報を調べるときはひとつ注意してほしい。それは提供された薬剤情報は製薬会社からのものだから、必ずしも信用できるわけではないことだ。自分たちに不利な情報は公表したがらないのは当然だ。また新薬の場合は新たな副作用が発見されるまでどうしてもタイムラグがある。医師がやたら新薬を出したがるのは薬価が高いこともあるが、副作用がまだ全部発見されているわけではないから、もし患者の身に何かあっても責任を逃れられるという心理が働いているためだ。
例えばリスペリドンという抗精神病薬がある。この薬の薬剤情報には依存症は見当たらない。そのため医師も「この薬には依存症がないですよ」と説明するが、実際に服用した利用者を何人もみている俺には信じがたい。この薬の副作用による興奮状態はすさまじい。どんなに言葉を尽くして説得しても落ち着かせるのは難しい。そこでまた落ち着かせるためにリスペリドンを投与するわけだ。だが、この薬を内服しないと興奮状態が止められないならそれは「依存症」と言うのではないのか?睡眠薬や精神安定剤、抗うつ剤や鎮痛剤など中枢神経薬(脳に作用する薬)に依存症の副作用がないものはまずない。
また薬剤師や医師が「これは副作用は軽いですよ」と勧められても信用してはいけない。薬の作用や出る副作用は患者によって違う。その薬が患者にとって軽いのか重いのかは飲んだ患者にしかわからない。
最後になるが、医療とは危険で不確かなものだ。確かなのは薬には副作用が必ずあり得ることだ。結局のところ、信用できるのは自分自身だけなのだ。安易に医師や薬剤師に自分の未来を任せてはいけない。
エル・ドマドール
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