[58]転職者シリーズ(3)面接
転職者シリーズも3回目を迎える。
今回は福祉業界の就職面接について語りたい。前提として言って置きたいが、俺は福祉業界への就職自体お勧めはしない。理由は給料が低い、将来性ないなどいろいろあるが、とにかく福祉のいいところが見つからないからだ。今や福祉じゃなくても仕事はいくらでもある。こんな業界とは縁が無い方が諸君のためだ。
しかし、それでも敢えて福祉業界へ転職する人はいるだろう。自爆テロ並の無謀さだが、蓼食うものも好き好き。その人たちのために今回は面接についての助言をしたい。履歴書の書き方や面接に望む服装は別に他の業界とは大差ない。しかし、面接の対処が少し他の業界と異なるところが福祉にはある。それを詳しく説明しよう。
まずは福祉の職場は求職者に何を求めているかお分かりだろうか?組織によって職員に求めるものは違うこともあるが、どこの施設も共通していることが一つだけある。それはどこの職場も基本的には「従順な羊」が欲しいということだ。前号でも語ったように福祉の職場は中途の転職者を敬遠する傾向がある。キャリアも自信もついている転職者は下手すると職場の秩序を揺るがす脅威になりかねない。だから面接で「リーダーシップがある」「?に関しては強い自信と信念があります」など強い自我を印象付ける台詞は禁句だ。
どこの業界でもそうだが、キャリアを持つ人は自分なりの仕事に対するプライドや信念など確固たるプロ意識があるものだ。しかし、施設はそのような人々を好まない。たとえ「経験者を優遇」と求人票に書いてあっても絶対にダメだ。経験者を優遇すると言いながら自我の強い言いなりにならない経験者は平気で不採用にするところがあるからだ。屈折した自意識こそ福祉業界そのものだということを忘れてはならない。
殆どの施設は他所では通用しない歪んだナルシズムに溺れている。前号でも強調したが、下手すると福祉施設は自分の施設が他の施設よりも優れていると無条件でうぬぼれている。客観的に見れば哀れな道化もいいところだが、福祉施設なんてどこもそんなものだ。だが、そのうぬぼれは転職者の伝える現実で崩壊するほど脆い。だから彼らが雇用したいのは「従順な羊」なのだ。福祉の業界では実力主義など無いし、キャリアなど意味が無いのだ。中途転職者には厳しい現実だがその点はわきまえておかなければならない。
自己PRをすることはよく転職指南の本に書かれているが、転職者は面接では相手がうんざりするような自己PRは避けた方がいい。聞かれたことだけ答える方がいい。「押しが強い」と思われると終わりだ。自己主張を控えて、謙虚さを前面に出して相手の話を聞くようにした方が無難だ。
例えば「貴方はどういう風に働きたいですか?」と聞かれたら「まず1から全部やり直すつもりで頑張っていきたいと思います。皆さんの中に早く溶け込めるようになんでも勉強するつもりです」ぐらい答えた方がいい。福祉の雇用者は謙虚で扱いやすそうに見える人が大好きなのだ。
中には面接時に自分の組織の理念を熱く語り始める面接官もいる。求職者の話を聞くのが仕事のはずだがよくあることだ。特に人事課が無い企業や施設でありがちだ。この時も黙って相手の語りを拝聴することだ。黙っているだけで内定が来ることもある。そして必ず聞かれるのは「どうして前の職場を辞めたのですか?」だろう。この質問にはどこかのマニュアル本にあるような紋切り型の答えでいい。
模範解答・・・・・「今の職場でも十分満足しているのですが、自分の可能性に挑戦したくて転職を決意しました」
この模範解答に自分なりの枝葉を付け加えた方がいい。くれぐれも間違ってもたとえ事実でも前の職場の悪口はできるだけ避けた方がいい。よく考えればこの模範解答は矛盾もいいところだ。この回答どおりなら転職する必要は無いではないか?でも面接ではこの模範解答が無難だ。面接官も馬鹿ではない。転職者が何らかの不満や人間関係トラブルが原因で辞めていることは当然察している。人間心理として職場の人間関係が良好なら辞めにくいものだ。だが、面接では何を言うかが大事なのだ。
面接は君のパフォーマンスを見てもらうことはできない。実際問題、面接で好印象でも実際の介護では使い物にならない無能職員は沢山いる。そしてそれとは逆のケースも勿論ある。求職者の能力を面接では判断できないのが現実なのだ。だからこそ面接では役者に徹することが必要だ。本来の自分を見せる必要など無い。外見やしぐさ、言葉で相手を騙すのだ。経歴詐称など犯罪になるものはダメだが、嘘をついて恥じる必要は無い。面接官だって平気で嘘を付いている。
エル・ドマドール
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