tax[152]借金の相続(2)

2013年5月31日

読者より質問が来ましたので、今日はそれについてお答えしたいと思います。

~質問ここから~

いつもメルマガ節美2を読ませていただいてます。ところで「[29]相続税の話-11-借金の相続」について質問します。

「相続人は、被相続人の財産を一切合財承継します。財産はプラスのものだけでなく、マイナスである借金(債務)も相続人に引き継がれます。

この場合ですが、プラスの資産は話し合いで法定相続分と異なる割合で分割してもかまいませんが、借金(債務)は必ず法定相続分で引き継がなければなりません。

たとえば、被相続人に借金が1,000万円あるとしたら、配偶者が半分の500万円、子供が二人いたとしたらそれぞれが250万円づつ引き継ぎます。この割合を変えることはできません。」

上記について、「借金(債務)は必ず法定相続分で引き継がなければなりません。」との記述がありますが、債務についても分割は相続人間の合意の下で自由であり、法定相続分で引き継がなければならないということはないと思うのですが。ちなみに、上記の考え方は、民法のどの規定からでてくるのでしょうか?根拠を含めてご回答いただけたら幸いです。

~質問ここまで~

<ここからたまごやの答え>

たとえば相続を兄弟で単純承認した場合、債務は兄弟が法定相続分に応じて負うことになります。(兄弟二人の場合は半分づつ←法定相続分)

相続人間での遺産分割協議で、債務については兄が全額引受ける約束をしてとしても、それは相続人間での契約であって、第三者である債権者に対し主張することはできません。(債務には必ず銀行などの債権者がいます)

つまり話し合いで兄が債務を継承するとしても、債権者は法定相続分に応じて弟に請求ができるということです。この場合兄が債務を負うことを債権者が承諾すればそれ弟の債務は免責されますが、まず債権者は承諾しないのが普通です。

なお、債務は兄が払うという契約は有効ですから、弟が支払った債務は兄に対して求償することができます。

※根拠となる判例:東京高裁昭和37年4月13日決定

遺産分割の対象となるものは被相続人の有していた積極財産だけであり、被相続人の負担していた消極財産たる金銭債務は相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然分割承継されるものであり、遺産分割によつて分配せられるものではない。

2003.10.29