第1回
■■そば料理
現代のそば、すなわち切って食べるそば「もりそば」という形になったのは比較的最近で、江戸時代のことらしいです。それ以前からそばは栽培されていましたが「そばがき」のようにして食べていたのです。
そしてその「切りそば」も最初は、汁につけて食べる「もりそば」しかありませんでしたが、その後冷たいたれをかけて食べる「冷やがけ」ができました。寒い季節にはそのたれを温めてかける「ぶっかけ」ができそれを略して「かけ」と呼ぶようになりました。これがいわゆる「かけそば」です。お蕎麦屋さんではこの「かけ」にいろいろな具をのせ、種ものとして売られたというのがいきさつで、このような献立は江戸時代後半に出来上がったとされています。
さて、そばは日本人の食生活に深い関わりあいを持っていますが、何も日本固有の食材ではありません。現在では日本で消費されるそば粉の8割がたは輸入製品です。「そば料理」は世界各地に存在し、その国独特の調理方法で愛されているようです。
そばは元々痩せた土地でも栽培できることから、東アジア北部から中国の雲南省あたりがルーツとされ、中国や韓国、東アジアはもとより、ロシア、イタリア、フランスなどでも栽培され、家庭料理としていろいろに利用されています。
フランスでは冷涼な気候の北部地方でそばは栽培され、ガレートゥ(クレープのようなもの)にして食べます。また、ブリニといわれるそば粉を使ったクレープ状の食べ物はロシアから伝わったとされています。したがってロシアでも盛んに栽培されています。
イタリアではそば粉とじゃがいものニョッキが有名。12世紀に十字軍がイスラム圏からそば粉を持ち帰ったのがきっかけで使われるようになりました。またネパールではそばは古くから主要な食糧で、そばの葉もスープやサラダとして利用されているようです。もちろんお隣の韓国や中国でもいろいろな料理に使われています。
このようにそばは食材としては世界でもポピュラーなものですが、日本のそばのように付け汁につけてすするというのは日本独特の食文化です。特に細く切った風味豊かなそばに鰹節でとったダシは世界でも優秀な料理ではないでしょうか。
2001/09/16