[62]かなり専門的な美白の話 その2

2009年11月30日

やたら詳しい美白の話。前回は4つのパートに分けて、メラニン生成のメカニズムをお話していますが、美白の場合、これにプラスして、メラニン排出促進というのが入るので、5種類の美白メカニズムが存在することになります。けっこう大雑把な分け方ですが(これでも、かなりはしょっているのです・・・)。
第一段階から、順を追ってご説明しますが(もはや、こんな情報を求められているのか、謎)、めんどくさくなったら飛ばしてくださいね~~。
ということで、第一段階。「ケラチノサイトからメラニン生成のための指令が飛ぶ」という部分。
実は、この考えかたは、かなり新しい部類のものです。
従来は、メラノサイトが直接紫外線の影響を受けて、メラニン生成が始まると考えられていました。いまだに、そう思っている人もいます。多分、そのメカニズムもまったくないわけではないのではないかと、私個人は思っているのですが、現在の皮膚科学によると、紫外線の受容体はケラチノサイトにあるとされています。
ケラチノサイトは紫外線を感じると、メラノサイトへ指令を発します。指令といっても、言葉や電波ではなく、それは「神経伝達物質」と呼ばれるものです。
現在、メラノサイトにメラニンを作らせるための神経伝達物質には、数種類あることがわかっています。化粧品のレベルで相手にしている物質は3~4個くらいですが、手元の資料だと10個以上記載されていますし、まだまだありそうな雰囲気ですね。
代表的なものはエンドセリンという物質。これをガードすることにより、メラニンが「作られ始めるのを止める」という美白メカニズムが、この伝達物質ガードの美白メカニズムの第一号で、花王が開発した「カモミラET」という物質が、これに相当します。
私は、偶然、花王がこの研究を皮膚科学会などで発表し始めたころに、学会によく顔を出していたので、かなりリアルタイムで見ていたのですが、難しいながら、かなり革新的なメカニズムを提案する花王の研究者に尊敬を覚えたのを記憶しています。もっとも、出てきた物質がカモミラエキスだったので、ちょっと拍子抜けでしたが(実際には、少し加工してあるようです)。
その後、このメカニズムにかかわる成分は非常に増え、また、従来の美白作用があるとされていた成分も、これらのメカニズムを持っていることがわかってきたりというのもあります。
たとえば、資生堂がHAKUで配合しているt-AMCHAという成分は、プロスタグランジンという物質を阻害しますし、ヒスタミンやα-MSHという成分を阻害することでも、美白につながるようです。
これらのメカニズムによってわかってきたことのひとつに、刺激反応による肌の黒化という問題があります。
たとえば、ナイロンタオル黒皮症に代表されますが、引っかいたり、傷ができたりという物理的刺激の跡が、シミとなって残る現象が知られていますが、これらは紫外線とは関係なく、物理的な刺激によって神経伝達物質が作られ、これによってメラニン色素が作られたと考えられます。
つまり、紫外線に当たらなくても、しみの原因ができてしまうメカニズムがわかってきたということ。
また、グリチルリチン酸などの抗炎症剤にも美白作用が知られていますが、これらのメカニズムにかかわっていると考えると、納得できる気がします。
もっとも、このメカニズムの美白成分の最大の問題点は、メラニンを作らせないという、予防的な意味では非常に有効であると思われるのですが、できてしまったシミに効くの?と、考えると、メカニズムがメカニズムなだけに、ちょっと難しいんじゃないかなと思えてしまったり。
まあ、学術論文を見る限り、かなり効果はあるようなのですが・・・。なんて書くと、日本化粧品業界の2大巨頭に怒られそうですが。
ということで、次回は次の段階に進みます。
トミナガ☆マコト