[63]かなり専門的な美白の話 その3

2009年12月10日

やたら詳しい美白の話。第二段階目は「メラノサイトが指令を受け、チロシナーゼ酵素が活性化する。」です。
とはいっても、いきなりこんなものを読んで、ああ、なるほどね、といえるのは、研究職のプロと、ごく一部の美容ライターさんと美容担当の編集さん(ともにトップクラス)だけで、まず間違いなく、一般の方はわかりません。
チロシナーゼというのは、メラニンを作るときに必要となる酵素です。
メラニンはメラノサイトという皮膚の中の細胞の中で作られます。出発はチロシンというアミノ酸で、これにチロシナーゼという酵素が働くことで、ドーパという物質になり、これにさらにチロシナーゼが働いてドーパキノンとなり・・・と段階的に数段階を経て、メラニンという成分になるのです。
メラニンは非常に安定な物質で、容易に壊れることはありません。なので、できてしまったメラニンを破壊することは非常に難しいため、その手前で「できなくする」のが化粧品のメカニズムです。(もしくは、できたメラニンを速やかに排出させる。)
前回お話したのは、このチロシナーゼを活性化する情報伝達物質を阻害するというメカニズムでしたが、直接チロシナーゼに働きかけて活性を阻害するという成分もたくさん発見されています。
昔で言うと、代表的なものはプラセンタエキスでしょうか?そのほか、植物エキス系でも数多くの物質が、このチロシナーゼ活性阻害を標榜しています。コウジ酸なんかも、たしかここに効く成分だったようですし、ごく最近ではレゾルシン誘導体という成分が、強力なチロシナーゼ活性阻害剤として注目されています。
ただ、難しいのは、チロシナーゼ活性を阻害するためには、基底層まで浸透する必要があるのですが、美白成分、もしくは美白作用を持つといわれる植物成分のほとんどが、水溶性の成分であるということ。そのため、浸透力については、非常に疑問があり、実効としては不十分という指摘があることです。
浸透という意味では、ビタミンC誘導体に油に溶けるタイプのものがあるのと、ライオンが出しているエラグ酸あたりが優れているとされていますが、油溶性ビタミンC誘導体は、安定性に難しさがあり、エラグ酸は細胞毒性が非常に強いといわれています。先にあげたレゾルシンの誘導体は、この点において非常に優れていて、しかもチロシナーゼ活性阻害が非常に高い(一説ではハイドロキノンの数千倍とも。どういう試験をしているのか、ちょっと不明確なのですが。そして、ハイドロキノンの主な機能はチロシナーゼ活性阻害ではない)ということで、注目なのですが、配合濃度依存で刺激が出るという報告もあり、やはりなかなか難しいようです。
ちなみに、チロシナーゼ活性阻害剤の多くは、抗酸化成分であったりしますが、抗酸化成分の場合、主な機能は、次に上げるドーパもしくはドーパキノンの還元作用によるメラニン生成阻害なので、酵素活性の阻害とは少しメカニズムが違います。おそらく、専門家(資生堂、花王クラス)では、そのあたりのメカニズムについても、きっちり区分けがされているのでしょうが、原料屋が出してくる資料のレベルでは(商売っ気たっぷりの資料であることも手伝って)、ここらへんがあいまいなままなのが残念なところです。
そういえば、カネボウのマグノリナンは、チロシナーゼの成熟阻害といって、これまた少し違う形でのアプローチでした。逆にサンスターのリノール酸Sという成分はチロシナーゼ分解促進といわれていて、なんだか、どんどん進化しているこの分野。情報伝達物質のねたが出尽くしたので、このへんに攻めてきたか、と私個人は思っております。
まあ、一般消費者にとって、そして、普通の化粧品開発者にとっては、どっちでもいいことなんでしょうけどね(笑)
ということで、次回は、今回よりは少しすっきりする、次の段階の話です。
トミナガ☆マコト
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