富士宮やきそば 前島
訪問日:2007年10月7日
中伊豆の伊勢海老漁が解禁になりました。早速、松崎の民宿を確保し、伊勢海老料理コースを予約。東名高速で伊豆に向かう途中どうしても寄りたい場所があったのです。それは富士宮焼きそばで有名な「前島」です。
ETC割引を受けるため、常磐道に乗り込んだのは3時50分。東名をゆっくり走っても7時半には富士宮市に到着。カーナビに電話番号を入れると名前を聞いてくる。これは個人宅らしい。前島と入力すると「前島美和子」とでる。おかみさんの名前でしょうか。
富士インターを出てまもなく住宅地に誘導されます。一方通行などちょっと迷いましたが、運よく「前島」の看板を発見。本当に普通の住宅地にある一軒家。駄菓子屋ですから違和感はありません。午前7時半ということもあり、シャッターは降りたままです。
今日は休みかもしれない、と一抹の不安がありましたが、まもなく岡山ナンバーの二番目の客と思しき人が到着。そして続いて、三番目にはカップル客が到着。家から娘さんらしき人が出てきたので、駐車場を聞く。庭が駐車場になっており、その他には道路を隔てた空き地の一角が駐車場とのこと。氷の旗が目印。ここは三台分とめられますが、契約は一台のみ。とにかく住宅地なので近所迷惑にならないよう、訪問するときは注意が必要です。
娘さんに続いて奥さんが登場。この店の主です。駐車場のPOPを掲げたり、のぼりをセットしたり、パラソルを広げたりして開店準備。8時前にはシャッターも開き、店に入ることができました。
店の中には大きな鉄板が二つ続きでおいてありその他にはテーブルが一つ。おかみさんはおもむろに鉄板に火を入れます。客は私ら含め5人ですが、順番に焼いていくとのこと。一番は様子を見たいので岡山の客人に譲りました。
この前島の焼きそばはおかみさんが鉄板で焼き、それを客が箸でつまんで食べるスタイル。皿はありません。したがって前客が食べ終わらないと席が空きません。行列ができてもこのペースなので、混んでいるときは大変待たされることとなります。
富士宮焼きそばの特長は肉カスがはいっていること。麺が蒸しただけの固めの麺であること、だけだそうです。肉カスとは、豚肉からラードを絞ったあとのカスだそうで、昔はたくさんあったのだけれど、富士宮焼きそばが有名になったため、今は品不足とのこと。前島は老舗なので、なんとか分けてもらっているのだそうです。
ネットを探索すると富士宮やきそばの薀蓄がありますが、自宅で作るときは、麺だけ買ってあとは家にあるもので作ればよいとのこと。ソースも家にあるもので十分。富士宮やきそばは有名になりましたが、特に特長があるものではない、好きに作ればいいとは前島さんの哲学でしょうか。
さて、鉄板を熱し、ラードを敷いて、キャベツねぎ、肉カス(冷凍してある)をさっと炒めます。そのあとやきそばを袋から出しほぐしながら、乗せます。そして鉄板の上にあるやかんから水を加えるとじゅっと蒸気があがります。そのあとソースを加え混ぜて出来上がり。鉄板の上からあつあつを頂きます。半分くらい食べたら、卵を加え、軽く混ぜて食べるのが卵入り。鉄板の上でしかできない前島ならではのメニューです。
富士宮やきそばは有名になりましたが、もともとは老人の仕事。つまり隠居してやることがなくなった年寄りの仕事なのです。したがって、その老人が食えればいい、また後に継がせるものでもなく、一代限りの仕事なのです。チェーン展開するようなものではないのです。
前島のおかみさんは見た感じ50~60歳前後。この道30年といいますから、三十歳の若さでやきそば屋(駄菓子屋)を開店したことになります。当時もやはり年寄りの商売といわれたのですが、前島さんがこの商売を選んだのにはだんなさんを早くに亡くしたというわけがあるのです。
だんなさんを若くしてなくした前島さんは、子供を育てる必要があった。勤めに出ることも考えたが、子供から目を離すことができない。そこで、子育て手をしながらできるやきそば屋さんを始めたとのこと。開店のお手伝いをしていた30歳ほどの女性は当時の娘さんだったのでしょうか。気がつけば30年もこの商売をしており、休みはほとんどなし。生活に密着しているから特に苦痛は無いものとのこと。
たまに旅行に出ることもありますが、そのときに限ってお客さんが来ていて残念な思いをさせてしまうのがいやで、現在もほとんど休みなく働いています。富士宮やきそばはマスコミやテレビのおかげで有名になってしまいましたが、もともとはこういった生活に密着した産物なのだと、痛感したのであります。
■普通の一軒家で営業している駄菓子屋という感じ。庭が駐車場になっているので遠慮なく中へ。
■道路を隔てた向こうに駐車場一台分。氷の旗が目印。
■日曜日は焼そばのみの限定メニュー。具なし¥400。イカ入り¥450。肉入り¥450。玉子入り¥450。大盛り100円増し。
■店内には色紙がいっぱい。右端2枚は元祖でぶやの取材履歴。山本梓、パパイヤ鈴木などの文字が読み取れます。
■ミックス玉子入りを調理中の前島さん。お客さんとの話を絶やさないのは前島流。
■こんな感じで出来上がり。鉄板からそのままいただく。猫舌の人はちょいっと辛いかも。腰のある食感が富士宮焼きそばの特長。半分くらいいただいたら玉子を絡める玉子入りにも変更可能です。ぜひお試しを。
■富士宮やきそば 前島
住所:〒418-0072 富士宮市矢立町195
電話:0544-27-6500
FAX:0544-27-6500
営業時間:8:00~19:30
定休日:年中無休
駐車場:3~4台
座席数:テーブル&鉄板前席13名