[13]防腐剤って本当に必要なの?
化粧品メーカーで仕事をして長いのですが、防腐剤についての質問も、時代とともに変化しつつあります。私が化粧品に関り始めたばかりのころは、防腐剤というものがそもそも認知されていなかった時代で、入っていて当たり前でした。これは香料についても同じです。
その後、香料が、続いて防腐剤が皮膚刺激や皮膚への悪影響ということで指摘されるようになり、入っているかどうかが問題視されるようになって、お客様から、「防腐剤は入っていますか?」という質問を受け付けるようになりました。
結論から言うと、ごく一部の製品を除いて、すべての化粧品には何らかの防腐剤が配合されています。ごく一部というのは、水分を含まない製品(フェイスパウダーや化粧油など)もしくは脂肪酸石鹸やリンスなど、原料それ自体に防腐効果があるものです。
ただ、前者の商品であっても、美容成分が多く含まれるとそれの防腐が必要になりますし、後者でも酸化防止剤など安定剤などは含まれることが多いです。
防腐剤は製品の安全性を守るために、絶対に必要な成分です。美肌成分といわれるものは、ほとんどが雑菌の繁殖に適しており、酸化されやすいものも多いので防腐剤、酸化防止剤などがないと、すぐに変質してしまいます。
最近では防腐剤を減らすために容器に工夫をしたり、個別包装になっているものも多くみられますが、雑菌の中には空気がなくても繁殖できるものもあり、やはり防腐剤は必要というのがプロの意見です。
ただ、世の中には防腐剤が入っていないという製品もあります。そういう商品は
1)もともと必要ない
→これは、前述のとおり。ただ、これは処方の特性であって、企業努力とかで防腐剤を配合しないように工夫されているわけではなく、また、それによって特別に優れた何かがあるわけではありません。かつて、石鹸で、防腐剤無添加なので、肌の弱い人でも安心です、といったコピーを見たことがありますが、石鹸がアルカリ性なので、それに対する刺激は検討されているのかな?と、思った記憶があります。(現在は、こうした表示は法律で禁止されています)
2)原料、もしくはその他の組み合わせで防腐力を出している
→個別包装など、特殊包装の製品に多いのですが、例えばグリセリンなどの、それ自体が弱い防腐力を持っているものを多めに配合しているケースです。対応できる菌に制限があるため、あまりきちんと防腐できないのが現実ですが、処方努力は認められます。ただ、それらの原料にも防腐力に比例して皮膚刺激があるため、大量配合が肌に与える影響が懸念されます。また、非常に処方自由度が低下しますので、製品の性能の低下も否めません。
3)嘘をついている
→残念ながらこれがもっとも多いのが現状です。防腐剤無添加と書いておきながら防腐剤としてエタノールが配合されていたり(かつて、製品説明を見たら、保湿成分と記されていて驚いた記憶があります)、あまり有名でない成分を配合していたりというケースがあります。また、旧表示指定成分無添加という、わかりにくい表現も散見されます。このケースではフェノキシエタノールがよく使われていました。これも防腐剤です。
日本で一般的なのはパラベンとよばれる成分(実は数種類あります)ですが、これはもっとも汎用性が高く(さまざまな菌に対応できるという意味で)、少量で効果があるため、相対的に安全性が高いためと言われています。確かに、アレルギーが完全にゼロではないのですが、以前、ある大学皮膚科でテストをしたら、その可能性は相当低かったとのことです。
アレルギーのテスト用の試料は、かなり高濃度のため、それでテストをすると刺激が出てしまうが、実際の製品の濃度はそれの100分の1くらいなので、テストの意味がない、という指摘もあります。
欧米ではホルマリンドナー型という防腐剤(防腐メカニズムの総称ですが、難しいので、ここでは説明を省略します)が一般的なのですが、日本人はホルマリンに対して非常に敏感な人が多く、トラブルの率が高いため、一部を除いて日本では許可されていません。
海外ブランドで日本で販売しているスキンケアなどでは、わざわざ防腐系を変えて、日本人用に製造しているものもあります。なので、同じ製品でも、海外で買ったらかぶれてしまったという話を聞くと、このケースかなと思ってしまいます。
内外価格差が大きい製品の場合、そのブランドの国内販売会社ががめついだけの場合もありますが、上記のような手間がかかっている分が価格に乗っていることもあるのです。
トミナガ☆マコト
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