第16回 聴いてはいけない

2019年12月19日

少し前に「買ってはいけない」という本が売れた。日用品の中で、添加物や毒物が多く入っている商品をリストアップして消費者に警告したものだったと記憶している。もちろん添加物やウソは食品や洗剤にだけ入っているものではない。評論家のもっともらしいお話にもたくさん入っている。

 たいがいの評論家は「中立」というポジションを外見上とっている。これは客観的に情勢を把握して発言していますよ、というポーズでしかなく、実は出身母体や所属団体へ何らかの利益誘導を企図している場合が多い。今回は星の数ほどいる経済評論家達の中から「聴いてはいけない」というか「聴いてもあまり参考にならない」「うさんくさい」連中などを辛口で選抜してみよう。

× 大蔵や通産(OB)の場合

政治への不信を口にしてもまず官僚の悪口は言わない。頭が良く理論武装がしっかりしているが、身内意識やエリート意識が強く社会経験がないのでぼろが出やすい。妙に言葉が空虚。

○ 日銀系

博識でバランス感覚もある。お公家さんスタイルで紳士。ほとんど学者。マクロ経済に強く、分析もしっかりしているが、将来の見通しについては絶対に断言しない。言ってることが難しいので人気はあまりない。テレビにも出ない。山手線の内側が主要な活動拠点。

× 証券会社系

銀行の悪口をいうわりに証券会社についてはふれない。この人たちの特徴はおもに証券会社がスポンサーのニュースショウ出演時に発揮される。「給与が高い」「社宅が豪華」「仕事をしていない」…などの辛口で感情的な銀行批判で、庶民には結構人気がある。難しい話はほとんどしない(できない?)。株価予測では食っていけなくなって、バブル以降お茶の間に進出した。バブルの時は「上がる」と言い続け、バブルが崩壊してから「下がる」と言い続ける人種。評論家のくせに内政干渉まがいのドルや外債のセールスマンもいたりする困ったちゃんだ。

◎ 外資金融系

一部の人気アナリストは結構良い。この人達はほとんどテレビには出ない。というかテレビで飯を食う気はまったくないだろう。本業で手一杯、カネ一杯だから。個人的にはゴールドマンサックスのアトキンソン氏のファンだ。外資系でも当局とのつながりも結構あって、インサイダー気味の情報も意外に強い。

- 政府や自民党系

政策の擁護に終始するといった具合。選挙民への演説と間違えているんじゃないだろうか。基本的に政治家は人気取りの商売だから制約が多くて言いたいことが言えないのだろうか。新任の大臣センセイが有頂天になって官僚の受け売りを言ってたりする。論外。

△ 大学教授

これは結構いろいろである。御用学者のようなものも多いが、一流どころできちんと勉強している人の話は説得力がある。特に東大の伊藤元重氏などは非常に中立的でアカデミックである。お茶の間にはほとんど登場せず、日経新聞やNHKにたまに出没する。ただし、政治関係の評論家は別。一時期テレ朝によく出てた人最近あたらないよね。政治関係の評論は「自分がこうなってほしい」という思い入れが大きいせいか、選挙予測をはずす傾向が強い。

△ 銀行系シンクタンク

可もなく不可もなし。特徴がない。結構大局的で長期的な見方が多く、政策側への提言といった感じが多い。いいことも言っているけど聴いている人はあまりいない。ところで銀行系シンクタンクの存在意義ってあるのだろうか。

? フリーまたはアウトサイダー

これはちょっとよくわからない。例えば竹村健一大センセイあたりか。しがらみのないのはいいけど何となく言いっぱなしって感じもするし。

以上ずいぶん言いたい放題だが、いわゆる講演会やセミナーの類を千件近く聴いてきた結果の僕の個人的な感想である。専門家のコメントや評論は非常に参考になるものも多いが、鵜呑みにすると危険なものも多い。信頼できる評論をきちんと聴くことや、ウソ・デタラメを見分ける目をもつことが大事だ。最後に簡単な評論家の見分け方をひとつ。

テレビによく出てる人ほどダメ(例外もたまーにあるけど)。

2001.01.28