第15回 投資信託の話 その2

2019年12月19日

金融ビッグバンの目玉のひとつに投資信託の整備が盛り込まれた。当局にとっても日本の投信のお粗末さは問題だったのである。そのおおまかなところは以下の通りである。

  • 証券総合口座の導入
  • 銀行等の投信窓販の導入
  • 私募投信の導入
  • 会社型投信の導入

これらのなかにはいまだ一般的でないものもあるが、一番インパクトがあったのは、銀行等(保険会社も含む)による投信の窓口販売解禁であろう。銀行としては、商品が増えるのは歓迎だが、預金と違って元本割れもある投信の販売については、対顧客トラブルの点から非常に慎重だった。もう一つ、銀行が投信に対して消極的だった理由は、自行の預金が投信に振り替えられることによって、預金残高が減少することにあった。預金が減少すれば、それだけ融資にまわす資金がなくなるし、預金量で銀行の優劣や規模を示す信仰も根強い。また、金融危機の際の「預金流出」に対する恐怖感も忘れられていなかった。

結局、投信窓販は、銀行によって取組姿勢に濃淡がある状態からスタートせざるを得なかった。正直言って銀行サイドとしては投信をあまり売りたくなかったと思う。とりあえず商品としては店頭に並べたものの派手な広告もうたなかった。

ところが売れてしまったのだ。98年の12月の解禁以来売れ続け、今や銀行系投信の残高は6兆円をこえてトップクラスの地銀預金量に匹敵する規模となった。しかもたった2年半で大きな宣伝なしに積み上げたのだ。まさに米国のミューチャルファンドを彷彿とさせるものである。投信全体の残高もバブル時のピークを超えたが、その内訳は圧倒的に公社債投信が多く、株式投信が少ない。この点で証券会社の中には冷ややかな反応をするものもあるが、とにかく投信という商品を認知させた意義は大きかったと思う。

この思いがけない投信好調の理由はいろいろとある。たとえば郵貯の満期と重なったとか、日本の株式市場の立ち直りとダブったなどであるが、一番大きかったのは、銀行の投信が「外国製」だったことや、証券各社には失礼だが「銀行」という比較的信用のある軒先で販売したことだと思う。銀行自身が投信に対して慎重に対処せざるをえなかったことが、かえって顧客側の安心感を誘ったということもあろう。

いま、銀行で取り扱っている投信のかなりの銘柄が外資系(証券)会社が運用しているものである。株式投信ではゴールドマンサックス、フィデリティなど世界の一流どころが並ぶ。運用もしっかりしているし、不透明な回転売買などは無縁だ。利回りも結構高い。

ということで僕も日本株の投信を買った。株式市場の停滞のおかげでずいぶんと安く購入できたと思っている。最後に投信に興味を持った読者のために投信購入の心構えとコツを書いておこう。

投信はリスク商品であること(元本割れもある)と、
長期運用の商品であることを理解し、(必ず余暇資金をあてること、5年10年はがまんしないとダメ)
上記をきちんと(しつこいぐらい)説明してくれる金融機関で買うこと
外資が運用している投信商品であること
銀行窓口で買うこと
売買は最終的には自己責任・自己判断で行うこと(これが一番大事)
上記が守れるならば、一度銀行窓口に行ってみることをお勧めしたい。

2001.01.21