第23回 お笑い国会中継

2020年2月11日

 国会中継がおもしろい。総理が辞めろ辞めないともめてるやつだが、辞めさせたい野党と辞めたくないご本人、正面切って辞めろとはいえない連立与党のかけひきが漫才以上である。

 森総理はなかなかの弁舌家だし、難しい言葉もよく知っている。読書家なのだろうか。世界中が辞めろ辞めろというなか、高級料亭で舌鼓をうち、ゴルフに興じ、疑惑には何ら答えることなく、でも辞めるとも辞めないとも言わない。なかなか肝がすわった豪傑だ。今の日本は、やらないことよりもやるリスクの方が大きいのだから最高の逸材である。ここまできたら森さんにずっと総理総裁に居座っていただきたい。皮肉じゃなくて。

 では国会中継の中から面白かったネタをいくつか。
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野党:家計の可処分所得は落ち込む一方なのに、政府は常に「景気回復過程」といい続けるのはヨミ違いも甚だしい失政ではないか。

政府:悪い数字ばかりではない。現に企業の経常利益は大変好転している。こういった良い数字も見て判断してほしい。

感想:企業の業績が好転するのは、主に従業員のリストラによるところが大きい。したがって企業業績の好転と労働分配率(要するに支払給与)は、反比例する。これはいい部分と悪い部分ではなく、国民にとっては両方とも悪い面でしかない。政府答弁はわかってて言っているのだろうが。野党はそれ以上突っ込まなかった。ひどいのは政府関係者の景気認識である。数年前から「回復過程」「春頃には」「秋頃には」「来年の今頃には…」と言っておきながら回復せず落ち込む一方である。これを「景気回復の逃げ水現象」という。確信犯だ。では次。

野党:連立与党は総理の不信任に反対しておきながら、密室で総理降ろしをしているのは筋違い。

与党:確たる後継候補や施策も示さないで、不信任を提出する野党こそ無責任。不信任による無用な混乱を回避するためにあえて信任しただけ(扇千景)。

感想:扇センセイは、自分の答弁でもないのに割り込んでしゃべったのがこれ。甲高いキンキン声でまくしたてたが、そもそも総理の不信任議案提出にあたって野党側が、自分たちの首相候補を明示しなくてはならないという根拠はないはず。不信任可決なら、辞職か選挙かを首相が決めるだけである。扇センセイが日本のサッチャーになりたくてしょうがないのはわかるが、もう少し勉強した方がいい。でも面白いよ。扇首相となれば。操縦されている本人にその自覚がない。テレビでおなじみの田島センセイと一緒。

野党:世界中が「森辞任」と報じている。世界が認めた事実をなぜ首相が認めないのか。

総理:マスコミがどう報じようが勝手だが、自分では辞めるとは一言も言っていない。マスコミの報道で総理のクビが飛ぶなら由々しき問題だ。

感想:まったくもって総理のおっしゃるとおりである。どうもマスコミは世論を煽るだけで責任がない。新聞で「総理辞任」のフライング報道をやったあと、同日夜のニュースショウで、「火のないところに煙はたちません」とキャスターに言わせた朝日はその最たるものだろう。

野党(共産):密室で生まれた総理を、また密室で葬る。国民はあきれている。総理:密室ではない。自民党の党員が選んだ代表者が決めたもの。密室密室というが、社長は役員会で決めるもの。どこがおかしい。あんたの党こそどうやって代表を決めているのかわからない。

感想:これには唸った。というか森首相の答弁にはときどきハッとするところがあるのだが、「無責任日本の中にあってなんで俺だけ例外にさせられるのか」という意識が根底にあるのだろう。居直っても妙な説得力がある。森首相自体誠に日本の社会・会社を代表する存在である。子供部屋から重役室まで日本中密室だらけである。

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 このままじゃいけないとみんなが思ってる。でもそう思っているみんなが実はぬるま湯の中でゆであがっている。「じゃあおまえがやってみろ」と言われてもこの心地よいぬるま湯からは出られない。「まず総理から出てくれ」と国民が言っているのだが、総理自身が「おまえ達だってぬくぬくじゃないか」と反論する。そうこうするうちにどんどんお湯はさめてくる。

 野党の先生方は、マスコミが作った世論に乗っかって「森降ろし」のポーズを国民に見せつけたい一心。政治になぜ国民が関心を持てないかははっきりしている。タダでもらった民主主義自体にありがたみが薄いことと、今の日本はまだ「政治」を真に必要としていないからである。首相と町内会長が同列なのだ。

 最後に一番心に残った答弁は以下のもの。そろそろ日本にも真の政治の季節がいやおうなくやってくることを予感させる、そして日本中を凍らせた答弁である。

宮沢財務相:日本経済が破局といったのは本意ではございません。活字になるとは思っていませんでしたから軽い気持ちで非公式の場で言ったまでです。

 翌日株価は1万2千円をあっさり割りこんだ。

2001.03.18