第12回 2001年経済予測
「2001年宇宙の旅」というSF映画が制作されてから32年が過ぎた。あの壮麗なクラシック音楽を聴ける余裕が2001年にはあるだろうか。暮れの大掃除で家の中はきれいになっても、20世紀に地球に積もった埃とゴミはあいかわらず放置されたままである。
まあこんな話はマスコミやシンクタンクに任せるとして、もっと身近な2001年の日本の景気を勝手に占ってみよう。ちなみに巷の経済予測はまったく参考にしておりません。
ものすごく大雑把な話をすると、日本の景気は個人消費40~50%、民間設備投資20~30%、公共投資10~20%、住宅投資10%程度といった割合で構成される。ニュースで個人消費が伸びるとか伸びないとかいって騒いでいるのは、それが日本の成長率の半分程度を賄う大きな指標だから。次いで民間設備投資と公共投資が大きな要因だから日銀短観(日銀が四半期毎に作成するもので、企業への景況アンケートを中心にしている)などでも大きな比重を占めている。もちろん、これには地域差があり、一般的に田舎へ行くほど公共事業への依存度は高い。地方では消費は変わらなくても公共事業がなくなれば大きな不景気要因になる。整備新幹線が着工されれば地場の関連業種は10年食える。
足下の株式市場はおもわしくないが、これは加藤政局が不発だった余波と米国市場の低迷が波及した一過性のものだと思っている。では景気を構成する因子毎にひとつずつ予測していこう。
●個人消費-上向く。
バブルのピークから10年がたってそろそろ貧乏疲れが出てくる。耐久消費財(車など)の更新需要が結構見込める。インターネット家電の類も爆発的に売れるだろう。ただ、日用品やサービスについてはさらに単価が安くなって全体での支出は横這い。特にサービス部分での価格破壊はこれから本格的に始まる。ホテルや観光・理美容なんかは、今の二重料金が崩れて薄利多売を余儀なくされるだろう。また消費者同士の売買などリサイクル品の流通が拡大していくため、行政が把握できない物品流通が無視し得ないほど大きくなってくる。結果として営利目的の既存中小企業の売り上げはますます減少していくだろう。個人消費が上向いても金が入ってくるのは大手流通とIT関連、ゲリラ的なニッチ(すきま)産業に二分される。伸び率としては+4%ぐらいか。
●民間設備投資(一般企業が工場を建てたり機械を買ったりすること)
IT関連業種に一服感がやや出てくるかも。IT以外では生産能力増強などはなく、一定の更新需要にとどまる。中小企業については大きな投資する対象も資金調達も難しいと思う。+3%程度
●公共投資-まあまあ
選挙もあるし多少は伸びるはず。政治が変わらないから相変わらずの箱物や道路・港湾などへの支出が大きい。IT関連はごあいさつ程度にとどまる。全体では+1%程度。
●住宅投資-明るい
日本の住宅の質はこれから向上してくる。老人世帯向きの改築や増築・新築が増える。税制優遇も追い風 +3%
全体のGDP実質換算で3%は楽に達成し4%に近づくだろう。株式も早い時期に2万円近くまで回復する。ただ長続きせず、1万5千円~2万円のボックス圏にとどまる。大事なことは一時的にでも2万円を突破するかどうか。突破すればムードとしては大きく、また再来年以降のマインドに大きくプラスになる。
2000年はミレニアムだと浮かれてはみたものの、バブル崩壊後のトレンド(デフレ・不良債権・政局不安定)はまったく変わらない、あまり面白味のない一年だった。ただ、少なくとも、何がだめでどのような方向に進めばよいかが漠然と見えたと思う。来年はこれまでの流れから新しい芽が出てきて、いったんはある程度成長するのではないか。
2001年は、向こう100年、あるいは1000年というスパンを漠然ながら認識できる貴重な年になる。トップ企業はそこをもう考えている。この点についてはいずれきちんと記したいと思うが、共産主義同様、純粋な意味での資本主義というのがもう終わりつつあることを僕は感じている。
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今年11月から縁あってメールマガジンという媒体に寄稿するようになり、大きく世界が広がりました。励ましの言葉や、お叱りなどたくさんいただきましたが、残念ながらすべてにはご返信できておりません。この場を借りて深くお詫び申し上げます。「お茶の間経済学」という標題とはずいぶんかけ離れた内容になっていることもありましたが、来年もつれづれなるままに拙文をお送りいたしたく思います。
月並みではありますが、2001年が皆様方にとって良いお年になるよう心から願っております。
2000.12.22 桶川次郎 拝