第3回 IT革命 その1
毎日毎日IT革命だ。年寄りから幼稚園児まで、国家予算から子供の小遣いまでITなんだそうである。
ITとは何か。これをきちんと説明できる人は少ない。自分も含めて。直接はインフォメーションテクノロジー、つまり情報技術のこと。ますますわからなくなってしまう。つまりITなんてその人の取り方によってどうにでも定義できる。インターネットがITだと思う人もいればパソコンがITだと思う人もいる。ITをモノだと思っている人もいればただの流行だと思っている人もいる。
でも一番ITに近づくには、この言葉を「概念」としてとらえることだと思う。理屈よりも直感。IT革命によってどうなります、こうなります、あるいは便利になります、いや失業します・・・。みんな正しいけど、いま起きているIT革命の本質は産業革命に匹敵する「人類にとっての価値観の転換」だ。
産業革命以来の大量生産・大量消費・画一化された価値観・マスメディアや国家の台頭・資本主義というシステム…といった19~20世紀を貫いた軸が、大きく変化する。その予兆をITから直感的に読みとるべきだろう。ITを年寄りの講習会の名目にして教育予算をとろうなんていう輩は、本質から一番遠い存在だ。
ITがなぜそんなに大したことなのか。ただのパソコンをつなぐだけの話じゃないかという人もいるだろう。でも少し考えてみよう。僕はマスメディアの人間じゃない、出版社とも関係がない、でもこうやって文章を書いて結構多数の人が読んでいる。インターネットを使い込んでいる人たちは、自分のほしいモノがあれば、まずオークションやネットの売買掲示板を調べて、気に入ったモノがあれば直接所有者にかけあって手に入れるだろう。しかも街のデパートに行くより、近所のスーパーに行くよりも安く、たったひとつのディスプレイを通した方が、望みのモノを見つける可能性がはるかに大きいのだ。
要するにこんなコラムにしたってモノにしたって、中間者・媒介者(メディア)を介さずして多数と直接やりとりできる。これがITの本質的概念だと思う。「メディアを必要としない社会」がITによってやってくる。これが21世紀最初の10年(zero decade)のキーワードになるはずだ。
2000.11.09