[54]プチ整形の話

2009年7月22日

私の専門は化粧品の開発なので、実は整形とか、そういう外科手術的な分野は専門外なのですが、仕事柄聞かれることが多いのと、やはり情報は入って来やすいので、ここでは化粧品技術者からみたプチ整形ということで、少しお話させていただきましょう。
さて、最近の化粧品の裏キャッチコピーを見ていると、もう化粧品は整形手術並みに顔を変えてくれるという印象があります。実際、一ヶ月10万円のクリームを何ヶ月も使ってシワを取るのなら、とっとと手術したほうが早いのではと思います。
日本では、あまり公になりませんが、海外では「ボトックス打ってきちゃった」とか当たり前に話してしまうような文化もあるよう。米国製のコメディ映画では、時々ギャクとして使われています。
ちなみに、ボトックスとは筋肉の動きを止めてしまう、ある種の毒素を表情筋に打つことで、動きを止め、筋肉の動きによってできるシワを改善するというもの。眉間や目じり、額や口元の小じわに効果的とされていますが、やりすぎると(もしくは打つ人が下手だと)表情がなくなってしまったり、不自然な顔になってしまうといわれています。
そういえば、「コニー&カーラ」という映画の中で、主人公がお客さんの女性に「なぜ笑わないの~つまらなかった~」と問いかけるのに対し、女性が「ボトックスなのよ」と答えるシーンがありました。誰とは言いませんが、そこそこの年齢なのに、額がつるりとしてシワがまったくなく、目を見開いているのに眉が上がらず、シワがよらないという女優さんや歌手をテレビで見かけますね。(某女優は、「彼女はボトックスの打ちすぎで、まるでタッパーウェアのようだ」と批判されていました)
このように、主に注射で行い、メスを使わない美容整形を「プチ」整形と一般に言われています。ちなみに、「プチ」と「本格」整形の違いは、メスを使うかどうかのほかに、いやになったときに元に戻せるか(もしくは時間とともに元に戻るか)あたりと言われています。
注射で行う整形は、ボトックス以外に、ヒアルロン酸注射やコラーゲン注射、また、自分の脂肪を吸引してから、それを再注入するというものまでいろいろあります。残念ながら、私はどれも経験したことがないのですが、どれもかなり痛いらしいという情報があります。筋肉に打つ注射ですから、それは痛いでしょうねえ・・・。
プチ整形は、元に戻るのでノーリスクと思われがちですが、実はそうでもありません。ボトックスについては、毒素が身体のほかの部分に回ることがある、という報告がありますし、いつまでたっても筋肉が動くようにならなかったという報告もあるようです。
ヒアルロン酸や脂肪にしても、時間とともに吸収されて消える(あるいは安全な形で定着される)といわれていますが、部分的に石灰化ししこりとなって残ることも多いよう。そうなると、切開して取り除くしかなく、結局メスが入ってしまいます。
また、整形は依存症的になりやすいというのも事実。作家の中村ウサギさんも、エッセイの中で、最初は違和感があった手術後の顔も、すぐに見慣れてしまい、昔の自分の顔を忘れてしまった。そのため、時間とともに、本来の自分の顔に戻るのが苦痛で、本格的な整形を決意した、というようなことを書いていらっしゃいました。
次回は、本格的な整形の話を少し
トミナガ☆マコト