[56]化粧水を冷やすというテクニックのこと

2009年8月14日

ようやく美容関連ブログっぽいタイトルに戻ってきました。いつも脱線ばかりですみません。
さて、気温が高くなってくると、暑いときに特有のスキンケア手法というのが紹介されます。日焼け止めに関する話題が多いですが、化粧水を冷蔵庫で冷やしてから使うと、毛穴がしまっていいですよ、といったいわば裏技的な使い方も多く紹介されています。
日本人特有なのか、世界共通なのかわかりませんが(たぶん日本特有と思うのですが)化粧品カウンターやドラッグストアなどの店員さんに話をうかがうと、毛穴についての質問はかなり多いという話。特に、暑くなると、どうしても汗が出たり、皮脂分泌が盛んになったりして、毛穴が開き気味になり、目立ってしまうので、夏場は特に増えるようです。
毛穴対策の話をしていると長くなってしまうので、それはまた別の機会に詳しく説明するとして、ここでは、夏のスキンケアでよく紹介される「化粧水を冷蔵庫で冷やす」という行為について、化粧品技術者の立場から、お話させていただきましょう。
化粧品の正しい保管方法は、ご存知でしょうか?そう、冷暗所に保存、ですね。私の知人は、お米と同じと説明していました。いわく、冷暗所で、湿気が少なく、衛生的なところ。これは非常に妥当な説明です。
スキンケアに大変気を使われる方の中には、すべてを冷蔵庫に保管していらっしゃる方もいます。確かに、冷蔵庫の中は冷たくて暗いので、まさしく冷暗所。一見すると、品質保持に非常に適しているように見えますが、実は、これは要注意なのです。
スキンケアを冷蔵庫で保管することについて、実は、化粧品技術者、処方開発担当者の立場からはあまりお勧めしていません。もちろん、極端に暑くなる場所に保管するよりはずっとまし、という見方もあるのですが、冷蔵庫に保管するという行為には、主として2つの落とし穴があるのです。
ひとつは、その製品が冷たい状態で安定かどうか。意外に思われるかもしれませんが、高温で安定性が失われるのと同様、化粧品は低温でも不安定になることがあります。
実際にはめったに起こりませんが、化粧水や美容液が分離したり、クリームが離水したり(水が出てきたり)という現象は起こります。化粧品開発の現場では、処方の安定性を見るために、40度から45度くらいと5度前後(会社によって違います)の恒温でチェックしますが、私の経験で、40度では問題なかったのに、5度ではグリセリンが分離し、沈殿してしまったという処方がありました。
美容液やクリームなどは、もともと粘度が高いので、こうした沈殿はめったに起こりませんが、粘度の低い乳液や、最近増えてきたマイクロエマルジョンタイプの化粧水では比較的起こりやすいとされています。これは、乳液タイプの美容液でも同じことが言えます。
マイクロエマルジョンタイプというのは、実際には乳液なのですが、乳化が非常に細かいために、化粧水のようにさらさらしているというもので、しっとり型の化粧水で、多く見られる処方です。このへんの話も、いつか機会を見て、じっくりお話しますね。今は、冷蔵庫の話。
基本的に、化粧品は、暑くても寒くても、人間が暮らしていける程度の温度であれば安定であるように作られているのですが、やはり処方によっては不安定なものもあるので、注意が必要。冷やしてよいかどうかは、一度メーカーに確認すべきかと思います。
冷蔵庫に入れることの注意点はもうひとつあるのですが、ちょっと長いので、続きは次回
トミナガ☆マコト