[11]冷静な事
父の病気は思ったよりも悪いようで、予定していた手術が延期になってしまい、モルヒネと抗がん剤治療に移るそうで、たぶん、父にも本当の事を話すんだと思います。
こんなとき、なんで私は冷静なんだろうと思いました。本当に不思議で、悲しいけれど父が生きている間はいい思い出を作りたいなぁと、思いました。たぶん実感がないんだと思います。
父は何かと私に話しかけてくるし、映画に連れて行ってくれたりして、父に貰ったモノは沢山あります。でも、私はこれから何を父にあげられるのかは分からないけれど、たぶん、悲しむことや泣くことよりも、普段と変わらなくいることが私がしてあげれる唯一のことだと思います。父の病気のことを聞く前に、嫌な夢を見ました。
父が死ぬ夢でした。でも、それは夢だと思いたいです。今の医療技術なら、父の病気も治ると思いたかったけど、でも、無理なようで・・・。なのに冷静に先のことを考えてしまう自分が嫌です。でも、100人に1人は助かると言われているらしいので、その100人の中の1人になってもらいたいです。
冷静に物事を考える事はいい事だとよく聞きますが、こんな大事なときに冷静でいれることは、悲しい。たぶん、今、父に会いに行っても、普通に笑ってる自分が見えて、悔しい。後6ヶ月は、どうしたらいいのか分からないし、頭の中は真っ白なのに、なんで冷静でいることができるのかが不思議で意味不明で、どうしたらいいのか
わからなくて・・・。こんなとき、妹ならどうするのかな・・・とか考えてみても、妹は妹、母は母。
学校生活や勉強やレポートやバイトには冷静で要られなくて困ることがあるのに、父が死ぬと分かって何も出来ないもどかしさや、悲しみとか、沢山あるのに、冷静で落ち着いてしまっている。こんな娘で、父に申し訳なくて・・・・どうしたらいいのかなぁ・・・。
桐谷梨紗
