第16回■■納めた7万円に想う

2019年4月10日

7万円あれば台湾へ行って小龍包食べて帰ってきてもまだお釣りが来る。今はパラサイトシングルなので家賃は要らないけれど、昔一人暮らしをしていた頃なら一ヶ月分の家賃だ。7万円であれも買える、これにも使えると思うと、実に腹立たしい。税金として納めたら最後、その先は馬を買われたりマンションを買われたりする資金になっていてもわからないのだ。とこのご時世、ついついそんな愚痴の一つもこぼしたくなる。

サラリーマンの税金は勝手に毎月給料から天引きされているから、「税金を払っている」という感覚を持ちにくい。私も、毎月給与明細をもらっても手取りの額しか見ていないから、所得税を月々いくら払っているか漠然とした数字しかわからない。それどころか、年末調整では払いすぎた税金ですと言って返してくれるから、12月は得した気分にさえなってしまう。普段取られ過ぎているから返されるだけなのに、ありがたがったりして。

ともあれ、今度のことで、私は今までひたすら信じてきた申告分離課税もどうかな、という気になってきた。確かに、取引一件ごとに計算するとその都度その都度は申告の方がお得だ。が、1件1件の税金は少額でも、ちりも積もれば山となる。もし一つの銘柄1000株をじっと持っていて、35万円の利益を出せるとしたら、その時は源泉分離課税にする方がはるかに税金が安い。

それを思うと、今までせっせとわずかな利益を積み上げていたのがむなしく感じる。かといって、そうそう都合よく上がる銘柄を見つけられるだろうか?例えば400円で買った株が750円になって初めて35万円である。数ヶ月でそういう上がり方をする銘柄がないわけではないと思うが、発掘するのは難しいと思う。いくつも違った種類の銘柄を買えるほどの潤沢な資金があれば、そのうちの一つくらいはぐんぐん上向く銘柄にあたるかもしれない。また、「10年20年くらいは置いておくつもり」という気の長いスタンスならこれまた話は別だ。

しかし、取引を始めて間もない頃は、損をせずわずかでもプラスになったということだけで狂喜乱舞していた私なのに、この欲深さはどうだろう。7万円税金で取られてゼロになったならともかく、ちゃんと手元に利益は残っているのにああだこうだと文句ばかり。ちょっとばかり利益が出ると調子に乗って欲ばっかり深くなる感じ。つくづく人間って欲の動物だなと感じ入る。

この税金問題に限らず、株取引を初めて一番難しいと思うのは、自分の欲をどうなだめるかという点だ。普段の取引では、「あと1円」と欲を出すために売れなかったり買えなかったりすることばかり。2月頃だったか、一度下降線に入った住友不動産を買おうと470円で指値した。470円で待ちかまえる私の目の前、471円まで近寄りながら彼はきびすを返して行ってしまった。その後はそれこそウナギ登り、今や600円台の後半である。もう私の手には負えない。あの時意味もなくキリのいい数字にこだわって470円にしたばっかりに・・・もう少し自分から歩み寄っていれば良かったワなどと思ってももう後の祭り。相手が株でも男でも変なこだわりは捨てて柔軟にのぞむ方がいいみたい。

「最安値で買って最高値で売ろうと思ってはいけない。そんなことは不可能だから」株取引でよく言われることである。PCさえ閉じていれば、「全くそのとおり、私はそんな愚行はいたしません」とすましていられるのに、いざ株価ボードを前にするとだめなのだ、これが。何でこんなになってしまったんだろう、私。

2001.05.11
◆CANE