第36回■■友達と株の話をする
私は、株を買っているということをあまり他人に口外していないのだが、最近成り行き上、友人S子に告白することとなった。S子は、大昔D証券に勤めており、私が「株を始めようかな」と思っていた頃一度相談したことがある。S子は、「私は持っていた拓銀株が紙切れになった時もう株は買わないと決心した」と豪語し、「とにかく私は一年で辞めましたから、株売買に必要な知識もろもろはきれいさっぱり忘れました」と涙ながらに語るだけあって、その時はあまりこれといったアドバイスは聞けなかった。
そんな彼女ともしばらく疎遠にしていたのだが、つい最近勤務先の近くでS子と久しぶりに再会。しかも私の勤務先の隣にあるビルに勤めているというではないか。きゃあきゃあ久しぶりだねとか言いながらランチなど一緒にしたとき、自然と株の話題になった。私は「去年S子に相談してからしばらくして取引をはじめて、去年は調子よかったけど今年は全然ダメ。今なんか含み損だけで30万円超えた」という話をしたら、S子は「私も株買ってみたい!」「買うならヨシギュウ(吉野家9861)。ヨシギュウは株主優待で5000円のお食事券もらえるし。それか小僧寿司本部(9973)の全国共通食事券でもいい」などと一人でかなり盛り上がっていた。
翌日の昼休み、食事券のもらえる銘柄にやたら詳しかったS子は、わざわざ私のいる事務所を訪ねてきて、「やっぱりあたしも全日空買っちゃったー。300円で。2000株。朝出勤前に電話して、寄りつきで買えた」とへらへら笑いながらよってきた。あれほど食事券のもらえる銘柄にこだわっていたのに・・・・。
S子曰く「昨日CANEと話さなかったら多分株なんてずっと買わずに終わってただろうナァ。でもなんか毎日わくわくしそうだね!株価の動き見ると楽しい!!」
たしかに私は「全日空が含み損30万円を超した」という話はしたが、全日空を勧めたつもりは全くない。それなのにM子の話を聞いているとCANEがそそのかしたように聞こえるのがどうも気になる。「株は自己責任です」と諭すと「わかってるって」と軽い返事が返ってくるが、ほんとにわかってるかなあ。
S子はそれから毎日ふらりとやってきては「下がったね。でも気長に待つわ」と眉間にしわを寄せてみたり、「ちょっと上がったね。でももう少し持ってみるわ」と小躍りしてみたり、「多分、まだまだ下がりそうな気がするね」と言ってがっくり肩を落としてみたり、表情豊かにS子市況コメントを残して帰っていくことが日課となった。何ヶ月かあとに、「あのときCANEと株の話さえしなければ!!」と言われるような状況にならないことを祈るばかりである。S子のためにも私のためにも。
2001.09.28
◆CANE