第38回■■番外 モスクワ紀行その一

2019年5月1日

皆様。今回と次回は、株とは何の関係もない話題です。あしからずご了承ください。

先日モスクワから帰ってきた。モスクワに到着した日に報復攻撃が始まったというニュースが伝わり、無事に帰れるかしらん・・・と到着早々帰国のことを心配してしまった。

しかしそれから先は、案外気楽に過ごせた。というのも、新聞もテレビも意味不明で、ことニュースに関しては自分の周りが壁で覆われたような状態だったからである。ホテルのテレビでCNNをつけてみたところで細かい内容までわかるわけでもなく、キャスターの緊迫した表情と頻繁に挟み込まれる現地の映像をたよりに推測するにすぎない。

そんなわけで報復攻撃一連のニュースは私の視界から消え、ともかく滞在中は取り越し苦労をせずにすんだ。帰りの機内で配られた日本語新聞の見出しを見て、「そういえば世の中は報復攻撃一色だったのだ」と思い出した始末である。せっかくここまで何事もなく終わったのだからこの飛行機も無事日本に着いて欲しい、と祈りながら10時間弱を満席のエコノミー席で身を縮めながら過ごした。アエロフロートは離陸後の食事がすむと「黙って大人しく寝ろ」といわんばかりに機内は真っ暗。映画上映もなし。長いフライトであった。でも無事に帰国することが出来てよかったよかった。

ところで、「海外旅行ツアーキャンセル続出」「海外出張自粛」のニュースが相次ぐ中、ひょっとして機内はガラガラ?と期待していた私は甘かった。行きも帰りもアエロフロート機内はほとんど日本人の中高年ツアー客で埋めつくされていたのだ。

機内のおばちゃんツアー客、彼女らはたくましい。「今度はどこへ行く?」「南ヨーロッパ、行ってみたいわねー!!」「そりゃあやっぱり南フランスがいいわよ」「行かなきゃいけないところがたくさんあるから忙しいわ。あははは」

中には「楽しかったねー。おいしいもの食べたし、きれいなもの見たし、こんないい思いさせてもらったからもうこの飛行機落ちてもいいわ」発言をするおばさまも。そうか、楽しかったのか、良かったねと語りかけたくなるくらい実感のこもった言い方だった。

取り立てて裕福というわけでもなく、またその逆でもなく、ごくごく普通の50、60歳代であろう彼女ら(なぜかいつも男の人は一握りだ)。子育ても終わりそこそこお金もあり、まだ足腰も丈夫。さあ今のうちに、と彼女らは次々世界地図を塗りつぶし、色々なものを見て買って食べて、帰りの飛行機で「あー楽しかった。さ、次はどこへ行こう」と満足げにつぶやく。こんなおばちゃん達の住む日本って、ほんとに幸せなところなのかもな、と思う。例えば、モスクワに住む普通のおばちゃん達は?絶対こうはいかないだろう。

何の予備知識もなく、ただ「めちゃめちゃ物価が安いに違いない!」と勝手に思いこんで出かけて行ったモスクワであるが、一番驚いたのがその物価の高さ。こんなに高くてどうやって生活しているのか、私にはとっても謎であった。他にもいろいろ謎に思うことがたくさんあったモスクワの町だった。というわけで次回のテーマは「モスクワの謎」。

2001.10.21
◆CANE