第1回■■騒がしい株主

2019年4月6日

我が家では、母がソニー株を14000円で買って以来ずっと大事に保存中(今は8000円を少し切っている)。買った時から株価がどんどん下がっていって、売るに売れずに持ち続けることを「塩漬け」というらしいが、まあずいぶん塩が利いてきたことだろう。

毎朝新聞を見ては「下がった」「また下がった」「まぁた下がった」とつぶやくのを日課とし、「どうしよー!!80万も損したよぉおおおおお」と叫ぶ。朝からうっとうしいことこの上ない。私はそのたびどこかで聞いた格言(?)「株は長期的な視野で考えよ」「売った値段・買った値段は忘れよう」を引用して諭し、「損したっていうのは実際にお金を失ってから言ってよ。毎日毎日同じことばっかり、うるさいよ!!!」と怒って非常にイヤな一日のスタートを切るのだ。

自分の身の回りで唯一株を保有している人がそんな調子なので、私は株に対して余りいいイメージを持っていなかった。いや、株に対してと言うよりは株を買った後のその情けない態度に対して、といった方がいいだろう。損を広げたくなければ売ってしまって別の銘柄を買えばいい。そういうと母は「でもまた上がるかもしれんし・・・」と往生際の悪いことを言う。そう思うなら黙っておとなしく株価が上がるまで見守っていればいい。とにかく毎朝毎朝同じことをわたしに繰り返さんでくれ!私に毎朝「損した」とつぶやいたところで、一円も株価は上がらないのだから。

と思っていたら、久しぶりに会った友達とオンライントレードの話題になった。「オンライントレードなら手数料も安いし、自分のペースで売買できる」「株やるといろんなことがわかって勉強になるよ」「ミニ株ってのもあるから初めは少額から始められるよ」等々、相当のめり込んでいる様子。私はとにかく「株=朝の母のうるさい独り言」としか思っておらず、うっとうしいだけと思っていたので、オンライントレードという言葉もそのとき初めて知った。

しかし、パソコン一台あればキーボードを叩くだけで注文ができて、その上リアルタイムで銘柄の動きもわかるらしい。売りも買いも自分の判断一つ。タイミング良くやればこれは結構いけるかも・・・。財テクにさほど興味のない私でも、これだけ金利0.02%、利息16円の世界が続くとさすがに飽き飽きしてくる。幸い7年も自宅から勤め人をやってきたおかげで、ほんの少しの余剰資金もできた頃だった。私は、友達と別れた後、早速「日経マネー」を買って帰った。私が買った初めての金融・経済系雑誌だった。

2001.01.26

◆CANE