外食産業というのは、その労働力をパート・アルバイトに大いに依存している。パートはともかくアルバイト、とくに高校生アルバイトはそのほとんどの学校でアルバイトを禁止しているにもかかわらず、その労働人口はかなり多い。
日本の高校生はアルバイト禁止だが、アメリカではアルバイトは当たり前。もちろん禁止はしていないし、そんな個人的なことに口を挟むお国柄でもない。元々自由な国であるのだ。そんなアメリカでは外食産業の労働力の6割はハイスクールの学生に依存しているという。ハイスクールでアルバイト禁止なんかにしたら外食産業がつぶれてしまう危機に瀕する。だから、バイト禁止などというバカなことは元々しないのだ。
一時期私のやっていたラーメン店でも高校生のアルバイト君2人に店を任せたところ、丁度その高校生の先生がお客さんとしてはいってきた。一瞬にして店内の冷蔵庫の陰に隠れるその素早さは天性のもの。しかしその間、私の店はいらっしゃいませの声も無く、店員不在の店になってしまったのはいうまでもない。
高校生のアルバイト君はじつによく働く。高校生といっても進学校の生徒はダメだ。本人やる気になっても進学という環境が許さないので長続きしない。進学校でなく、進学などどうでもいい学校というのがある。そういう高校のアルバイト君は、体調不良で学校には行かなくてもアルバイトには這ってでも来る。学校は休んでもどうってこと無いが、バイトを休めは小遣いが減る。これは遊びたい高校生にとって死活問題。だからよく働くのである。
私がケンタッキーにいたとき、一緒に働いていたS君も例外ではなくよく働いた。時給500円くらいの時期に月に15万円も稼いでいたといえばどれくらいよく働いたか想像がつくだろう。とにかく学校のある日でも休みの日でもいつも店にいる。そんな感じだった。
居心地も良いのだろう。店長も可愛がると同時に便利に使っていた。飲食関係は人手商売である。主婦のパートさんでも子供が熱をだせば休まざるを得ない。社員だって急に具合が悪くなる事だってある。そういう時は決まってS君の出番となる。
S君は老け顔のせいか妙な貫禄もあり、正社員顔負けの働き振りであった。やがてS君も3年生になり就職活動を始める。学校にはほとんど行かなかったS君であるが、就職しないわけにはいかない。そして就職が決まり、みんなに惜しまれて店を去る。
しかしだ。あるときひょっこり現れたS君。遊びにきた、にしてはなんか様子が変。どうしたのか?とみんなは久しぶりに会った喜びと同時に妙な疑問が頭をよぎる。案の定、会社を辞めてきたとのこと。そしてしばらくここで働かせてくれと。
これは、じつはよくあるパターンなのだ。アルバイトで長続きするというのは居心地が良いから。そのうえアルバイト料がもらえるのだからいうことなし。ところが卒業して就職すれば正社員だ。色々な課題がのしかかる。先輩社員の機嫌も取らなくてはならない。いじめもあるだろう。希望を持って就職したのにこんなはずではなかったと挫折する。季節は大体五月。いわゆる五月病とも一致する。
S君はその後アルバイトとしてケンタッキーに復活したが、親にもやんや言われるのだろう、そうそうバイト人生も続かず、数回の転職を経てある大会社に収まったようだ。ま、これで一安心だ。
ちなみに、デニーズにも同じようなパターンのT君がいた。彼は専門学校生だったが、それとなく聞いたときには学校には行ってないみたいなことを言っていた。だったらちゃんと就職をしろといいたい。アルバイトで居心地が良いのはわかるが、これは蓄積にならない。時間の無駄だ。
アルバイトは居心地が良いからするのではなく、お金を貯めて旅行資金にするなどのなにか目的を達成するためにやろう。そして目的を達成したらきっぱり辞めよう。そして次なる目的に向かって歩いていこう。
2002/01/06