前回フランチャイズの話をしたが、日本には古来より営業権を従業員に譲渡する「のれん分け」という制度が存在する。ただしこの「のれん分け」は師匠と同じ力量を持ち、本家と同じ味を出せる人にのみ許される。したがって大量生産はできないので、現代社会のスピード化についていけず現実的ではないものとなっている。いわば「人」の力量に依存した増殖システムといえる。
これに対しフランチャイズは人の力量よりも全体的なシステムに依存した増殖システムで増殖自体はバカでもできる。したがってどんどん増殖する。しかし、増殖した後のオペレーションのレベルが保てず、そこで皆失敗しているのである。
その痛い経験から現在フランチャイズといってもやたら始めることはできない。昔は金や店舗用地、あるいは単なる「やる気」があれば本部はGOサインを出した。今はそうはいかない。土地を持ち、金を持ち、組織は会社組織とし、ある程度の経験の持った選ばれた人でなければフランチャイズに参加できなくなっているのが現状である。
現在マクドナルドやカレーのココイチなどは社員に対してフランチャイズを行なっている。これは一定レベルに達した社員の中からさらに選別された社員が社長となり独立してマクドナルド、あるいはCoCo壱番屋を営業するシステム。誰でもできるわけではないので、呼び名はフランチャイズでも実態は「のれん分け」に近いものがある。
企業側がこういったのれん分け的社員フランチャイズをするには経営面での思惑がある。飲食店は売上の割りにコストのかかる業態となってきた。そのコストのうち固定費の占める割合が非常に大きい。固定費が大きいと損益分岐点売上も高くなってしまうため売上減少が即経営に響く。そのため固定費を極力変動費に置き換える方策が採られている。
その効果が高いのが社員独立フランチャイズシステムだ。店舗をフランチャイズ化してしまえば店舗にかかる固定費はオーナーの負担となる。食材や資材は売上に応じて発生する変動費が相対的に増える仕組み。つまり企業からすれば社員フランチャイズはリスク分散の一環なのである。
しかしね。私は思うのだが、独立して社長になってまで、もとの会社のフランチャイズ店をやりたいものなのだろうか?オーナーになったって業務内容はかわらない。当然好きなこともできないのだ。自分の店であって自分の店でない。しかも契約により何年も拘束され店をやめることもできない。これって結構地獄だと思う。独立するということは自分の思うとおりにやれる、できる。だからこそ「独立」ではないのか?。そのかわり失敗しても自分の責任。誰にも文句は言えない。それも自営の醍醐味だと思う。
2003/07/13
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